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ブラック企業の上司の多くに共通する「かくあるべし思考」 自分を犠牲にして我慢するほど人に厳しくなる典型的パターン

余計な我慢をしない方が、人は「利他」になれる

 現代の日本では、利己から利他への意識の転換が時代のキーワードとして注目されていますが、私はこうした考え方には否定的です。

 自分を大切にすることができなければ、人を大切にすることはできませんから、「利己」が悪いと考える必要はないのです。

 日本人には、自分を犠牲にして、我慢することが「美徳」という考え方が根底にありますが、余計な我慢はしない方が、人は利他になれます。

 自分を大切にするためには、ムダな我慢をせず、自分を犠牲にしないことも大切な要素です。自分のことを素直に愛したり、自分の欲望に忠実に生きることができれば、欲求不満やストレスで悩むこともなく、気持ちに余裕が生まれます。

 気持ちに余裕があれば、人のことを思いやったり、相手の気持ちを想像することができます。

 逆の視点から見れば、自分を犠牲にすればするほど、手枷足枷が増えて、人に優しくできなくなるのです。

 利己と利他を自分の中で「両立」させるためには、次のような流れをイメージすることが大切です。

【1】自分を大切にする(利己)

【2】ムダな我慢をしない

【3】自分を犠牲にしない

【4】人の気持ちを想像する余裕が生まれる

【5】人に優しくできる(利他)

 物ごとを「善か悪か?」とか、「白か黒か?」という二者択一のどちらかで判断することを「二分割思考」といいますが、利己か利他かという考え方も、典型的な二分割思考といえます。

 この考え方の問題点は、二つを明確に区別することで、それぞれを「両極端」なものと考えてしまうことです。利己と利他は両極にあるのではなく、利己の延長線上に利他があると考える必要があります。

我慢を強いる状況がブラック企業を生む

 自分を犠牲にすると、ストレスや欲求不満によって、人の気持ちを想像する余裕が持てないだけでなく、人に対して厳しくなる傾向があります。

 自分を犠牲にするというのは、「自分で自分に我慢を強いる」ことですから、その我慢の「捌け口」が、周囲の人に向かってしまうのです。

 意外に思うかもしれませんが、現在、社会問題になっている「ブラック企業」が生まれる背景にも、こうした我慢が関係しています。

 ブラック企業というのは、トップの方針によって、会社ぐるみで社員に厳しい待遇を強いているケースはごく一部です。ほとんどの場合、管理職の立場にある上司が、部下に厳しくすることが、会社がブラック化する原因を作り出しています。

 そうした上司の多くに共通するのが、「かくあるべし思考」をしていることです。かくあるべし思考とは、物ごとを「こうあるべし」と決めつけて、それに反することは許さないという偏った考え方を指します。

「新規顧客を獲得できなければ、営業は会社に戻ってくるな!」とか、「仕事が終わらなければ、休日出勤は当たり前だ!」など、部下に対して厳しい指示を出す上司には、「仕事は、かくあるべし」という強い思い込みがあるため、社員それぞれに事情があることなど、「どうでもいい」と思ってしまう傾向があるのです。

 こうした上司の大半は、部下に対してだけでなく、自分の仕事に対しても、「かくあるべし」と考えて、自分自身を厳しく縛り、自分に我慢を強いています。

 自分が我慢している分だけ、部下にも厳しい態度で向き合うことが当然と思うようになり、自分が考える「かくあるべし」を強引に押し付けてしまうのです。

 これは、自分を犠牲にして、我慢している人ほど、人に厳しくなる……という典型的なパターンといえます。

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