快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた

電動化シフト宣言の“ロータス最後のエンジン車”「エミーラ」試乗レポート 1.4トンボディでも「軽さは正義」の軽快感

 現状はV6のファーストエディションの走りを楽しみます。走り出すと、ミッドエンジンスポーツカーらしく、ドライバーを中心にしてクルマの鼻先の方向が決まる感覚は実に心地がよいものです。おまけにロータスの特徴であるダイナミックなコーナリング性能はまったく失われていません。前後のダブルウイッシュボーンサスペンションがワインディングでは威力を発揮し、バターの表面を温めたナイフで切り込むように、気持ちよく路面をなぞっていく感覚は快感そのものです。

やっぱり軽さは正義だとエミーラが証明した

 1.4トンというボディは「できればもう少し軽かったら」と、思いつつも、それでもBEVの力任せの走りとは違った、軽々とした走りを実現してくれます。慣性重量が軽いということは車の挙動でプラスに働きます。加速も軽々で、コーナリングはより安定し、ブレーキングも確実にこなせます。重量級のBEVに乗る機会がグッと増えた昨今、この軽々とした感覚は「軽さは正義」という感覚を蘇らせてくれます。力任せでない走りの軽快感、これはどんな時代になっても変わらず存在する価値観だと思います。

 さらにその軽快感をサポートしてくれるのが6速のマニュアルミッションです。コクコクと心地よく決まっていく操作感はモーターのシームレスな加速感にはない味わい。今やこのシフトフィールを懐かしむ時代になってしまいましたが、ドライバーにとっての心地よい操作感はここでも普遍だと思ったのです。

「気が付くと笑顔になっている」というロータス伝統の走りは、新世代モデル、エミーラにもしっかりと継承されています。

 そんな走りを楽しんでクルマを降ります。エミーラのコンセプトの中には「これまでのどのモデルよりも日常的な使用に適している」という要件もあります。ミッドに搭載されたエンジンの後方には、ロータスには珍しいほど広めの151Lのラゲッジに加え、シート後方にも208L、合わせて359Lの荷室スペースが用意されていたのです。カップルでの一泊ドライブにも十分対応できます。

 佇まいは相変わらずアグレッシブで、ロータスらしさは失われていません。一方で日常の生活にも寄り添ってくれる実用性は、エミーラのある生活を、より上品で快適なものにしています。

 たしかにカーボンニュートラルは待ったなしの問題です。ロータスがその問題に対してBEVモデル「エレトレ」を登場させることは必然かもしれません。一方で、この先もロータスであり続けるため、他の方法はないのか? エミーラはその一つの回答かもしれません。

 ポルシェやフェラーリなどの大きなスポーツカーメーカーではないだけに、独自の歩むべき道を、じっくりと考え、色々なチャレンジをしてほしいと思います。

(前回記事「ロータス・エレトレ編」から読む)

次のページ:【写真】エンジン車の魅力を継承する、ロータス・エミーラのスタイル
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