仮に、倒れた自転車のスタンドが壊れていて、かろうじて立たせて駐輪できても、少し触っただけで倒れるような不安定な状態であったと仮定してみます。
スーパーの駐輪場だと、通りがかりの人や自転車がすでに駐輪している自転車に触れることは珍しくありません。ですから、歩行者が接触して、不安定な自転車が倒れたという推定もあり得ないことではありません。その場合、倒れた原因について過失の有無が検討できることになります。
しかし、そうした条件がなければ、結局、自転車が倒れた経緯はわかりません。駐輪の仕方ではなく、他人がぶつかったり、いたずらされたりなど意図的な、あるいはそれ自体に過失があるような第三者の関与もあり得ることになります。これでは過失の有無を検討することもできません。結局、バイク側はあなたの過失や因果関係の証明はできないことになります。
以上から、自転車が倒れた理由や、そのことに落ち度があると思い当たる点がなければ、バイク側が過失や因果関係を証明するまで、請求に応じる必要はないといえます。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2024年4月25日号