手軽な足として親しまれる自転車。駐輪場にとめている間に、別の車両とのトラブルが発生した場合、責任は誰が負うのか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
スーパーへ買い物に行き、駐輪スペースに自転車をとめました。買い物が終わり戻ってみると、隣にバイクがとまっていて、バイクの持ち主から「あなたの自転車が倒れてきたのでバイクが傷ついた。修理代を支払ってほしい」と言われました。私が自転車をとめたとき駐輪場はガラ空きで、隣にバイクはとまっていませんでした。それでも私が修理代を支払う義務があるのでしょうか。神奈川県(女性・54才・パート)
【回答】
修理代の支払いをしなくてはならないのは、あなたの駐輪の仕方に過失があり、その過失とバイクの損傷との間に因果関係がある場合です。因果関係とは、「あれ(原因)なければ、これ(結果)なし」といえる関係です。具体的には、
【1】あなたの過失の結果、自転車が倒れて
【2】そのバイクにぶつかり
【3】バイクに損傷が生じた
といえる場合です。これらをバイクの持ち主が証明できない限り、あなたは修理代の負担を拒否できます。
自転車が倒れてバイクが損傷したというのですから、倒れるまでの間は自転車は立っていたことになります。そうなると因果関係の証明のためには、まずこの立っていた自転車がどのようにして倒れたかをバイクの持ち主は明らかにする必要があります。そうでないと、倒れた原因があなたの過失によるかどうかの判断自体ができないことになるからです。