相続をめぐるメディアの情報は「どうすれば得できるか」に終始していることがほとんどだ。実は、多くの人の相続において重要なのは、「どうトラブルや負担増を避けるか」というポイントになる。だからこそ、「あえて相続しない」という選択肢が有力になってくる。
1989年に年間約4万件だった「相続放棄」の利用件数は2022年には約26万件に達し、この30年あまりで7倍近くに増えた。『身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」が分かる本』の著者で司法書士の椎葉基史氏が語る。
「法改正などがあったわけではなく、単純に相続放棄を選ぶ人が激増しています。親の借金や地方の売れない“負動産”など、マイナスの財産を引き継ぎたくない人が相続放棄を選んでいます」
親に借金などの負債があってそれを引き継ぎたくなければ、正式な相続放棄の手続きを取らなければならない。
相続放棄が必要かを判断するには、親の生前からきちんと資産内容を把握しておくことが重要だが、様々な困難が伴うという。椎葉氏が解説する。
「親の存命中なら、基本的に単刀直入に借金の有無を聞くしかない。連帯保証人になっていないかの確認も必要。親が亡くなって4~5年が経ってから、連帯保証人としての請求を受けて驚愕したという相談例もありました。最近は『コロナ融資の借金』も目立ちます。特に飲食店などで個人事業の商売をしている家は、コロナ禍で借金をしたという事例が増えている。本人は借金を家族に隠しがちなので、確認が困難になる場合もあります」
帰省の際に郵便受けを確認し、督促状などが届いていないかチェックするのも有効かもしれない。