中学受験は「やってみないと分からない」
中学受験が他の受験、高校受験や大学受験とは違うのは「やってみないと分からない」という点だ。高校や大学の受験は中学や高校の学習の延長にある。そのため、中学や高校の成績がいい子が受験でも強い。高校入試で早稲田や慶應などの難関私立の一般入試は内申点を加味しないが、少なくとも英語、国語、数学に関してはほぼオール5の生徒ばかりが受験をしてくる。早稲田や慶應を受けるほどの生徒は、公立中学の定期テストは満点に近い点数を取るからだ。
一方、中学受験の内容は、小学校の学習内容や公文式とも違うので、スタート時点ではどこまで伸びるか分からない。実際、託児所代わりに中学受験の塾に通わせたら、偏差値が伸びて、御三家に合格したという話はめずらしくないのだ。
つまり、「いかに中学受験に向いているか」で勝負の大半が決まる。そうなると“高い合格実績を出している塾に入れたら、わが子も夢の難関校に合格できるかも”と胸を膨らませる人が出てくるだろう。そして、SAPIXはクラスの入れ替えが激しいので、最初は下位のクラスにいても、テストで高い点数を取れば、どんどんと上に行ける。実際、最初は下のほうのクラスでスタートして、半年後には最上位のαクラスに上がって、そのまま開成に合格したという話はしばしば聞く。SAPIXは夢を与えてくれる塾なのだ。
とはいえ、どの塾にもメリットとデメリットがある。SAPIXも難関校対策に強い一方で、デメリットやリスクもある。今回はそのリスクを想像せずにSAPIXに入塾させたA子さん(専門商社事務職、40代)の体験を紹介しよう。
SAPIXを選んだのは難関校対策に強いから
A子さんと、公務員の夫はともに中学受験経験者だ。A子さんは御三家の滑り止めに位置する難関校を出ている。
夫婦とも校則の厳しい管理教育の学校に通っていたこともあり、娘には横浜市にある自由な校風で知られるフェリス女学院に入ってほしいというのが、夫婦共通の思いだった。
「自主性を重んじる方針に憧れていました。フェリス出身の友達はみな個性的でいい子が多いです。夫の女性上司もフェリス出身で尊敬できる人なので、めずらしく夫婦で意見が一致したんです」