自由の国アメリカを揺るがした“SNS害悪論”は決して対岸の火事ではないと語るのは、青少年のインターネット利用問題に詳しいジャーナリストの石川結貴さんだ。
「以前取材した中に、インスタグラムに依存するあまり、自分の髪の毛をむしるようになってしまった少女がいました。“インスタの中の女の子は皆サラサラのストレートヘアなのに、自分はくせ毛で量も多い。親はくせ毛もかわいいと言うだけで縮毛矯正を受けさせてくれない”とコンプレックスがふくらみ、自己否定感が強まった結果でした。
同じようにして、小学生がインスタには自分よりずっとかわいい子しかいないから、整形したいと言うケースも出てきています」
画像や動画の投稿がメインのインスタで注目を浴びる若者は人目を引く容姿をしており、極端なダイエットも美容整形も「美しくなるための当たり前の努力」として肯定される風潮がある。ゆえに、「それができない自分は努力が足りない」と自己否定のループに陥る人は少なくなく、判断能力が成長過程にある子供はより影響を受けやすい。
「ありのままのあなたが素敵だよと親がどれだけ言ったところで、SNS上では、『いいね』やフォロワーの数で明確に数値化され、それを“優劣の差”として受け止めてしまう人は多い。SNSにのめり込んで自己否定感が高まっている子に、親の声は届きません」(石川さん)
そもそも、SNSに投稿される画像や動画の多くは、加工や演出によって実物より何倍も魅力的に見せた「チャンピオンデータ」と呼ばれるものだ。精神科医の樺沢紫苑さんが言う。
「ダイエットジムのCMで完璧な肉体を披露している著名人のような『極端な成功者』像もそれに当たります。SNSでは毎日のように、そうした“虚像”を目にするため、そのたびに自分と比較し、自己肯定感がなくなっていくのです」