家や預貯金、借金など様々なものが相続の対象となる。しかし遺体や遺骨には一般的な財産扱いとはならない。では、遺骨を分けてほしい場合には、どうすればいいのか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
高齢の父が亡くなりました。といっても、私は昔風でいえば、お妾さんの子供。ただ、認知はしてもらっています。そんな私の願いは、父の遺骨を分けてもらい、ペンダントにし、肌身離さず所持すること。でも、あちらの遺族が承諾してくれません。こういう場合、どのようにすれば、分骨してもらえますか。
【回答】
分けてもらいたい遺骨は、そもそも誰のものかが問題になります。
今は焼骨となった遺骨ですが、生前は本人の身体の一部です。その身体は、直感的には体の持ち主の物ですが、例えば、通常の物のように身体の一部の売買を約束しても、相手がその履行を迫るのは倫理に反し、認められません。普通の所有権の対象とは違うのです。
しかし、本人の自由意思で支配できるので、本人の物だと考えたいと思います。そこで遺体や遺骨が、物として一般の動産同様に扱われるのであれば、遺産になるので、法定相続人が相続し、共同相続人のあなたは、遺産分割協議で、分骨を求めることもできそうですが、そうはいきません。遺体や遺骨は普通の財産ではなく、位牌など先祖供養をするための祭祀財産と同様の扱いをすべきであると解するのが通説だからです。