平均寿命が延びればそれだけ必要な老後資金も増える。年金世代の中にも「資産所得倍増プラン」として国を挙げて推奨する新NISAを活用しようとする人も増えているが、シニアになって初めて資産運用に取り組もうとすると、失敗することもある。老後資金運用で気をつけるべきことはなにか。
まず覚えておくべきは、手元に「生活防衛資金」を確保しておくのが大前提となる。家計再生コンサルタントの横山光昭さんが解説する。
「もし現時点で貯蓄がほぼない場合、安易に年金の繰り上げ制度は選択せずに半年分の生活費を貯めることから始めてほしい。月に30万円の支出があるならば、まずは180万円をキャッシュで用意すること。それ以降、月の黒字は全額新NISAに回しても、貯蓄さえ取り崩さなければ問題ありません」
マネーコンサルタントの頼藤太希さんも「6か月分の生活費さえ確保したら、あとは思い切って投資へ」と声を揃える。
「50代から働くのを辞める時期までは“最後の貯めどき”とも言える。しっかり預貯金をキープしておけば、月に5万~10万円ほどを運用に回しても大きなリスクはありません。退職金も、半額は預貯金や個人向け国債として確保しつつ、残りは投資に回してもいい」
債券の比率を自分の年齢と同じくらいにする
投資金額が決まったら、投資先となる商品選びだ。
新NISAでは、世界中の株式に分散できる投資信託の「オルカン」と呼ばれる「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や、米国を代表する500社を集めた株価指数「S&P500」に連動した運用をめざす投資信託が人気を集めている。
だが、これらはいずれも値動きが激しい株式だけに投資するため、リターンが見込める一方、リスクも決して低くない。
ファイナンシャルプランナーの鬼塚祐一さんは株式よりリスクの低い債券などを組み合わせた「バランス型」と呼ばれる投資信託を推奨する。
「株価はある日突然下落するため、株式は元本割れリスクが高い。時間が経てば回復するものの、数十年単位の時間を要するケースもざらにあります。だから、年を重ねるほど株式よりも債券の比重を増やした方がいい。
投資の世界では債券の比率を自分の年齢と同じくらいにするといいという考え方があり、例えば60代なら債券60%、株式40%が目安です。新興国も含めた全世界に分散するのも手ですが、新興国はハイリスク・ハイリターンなので、リスクの低いアメリカなどの先進国と日本の債券と株式だけでも充分です」(鬼塚さん・以下同)