「余っているから譲る」「もう使わないから譲る」と言われたら、どう対応するだろうか。「譲る」という言葉には、「タダ」の場合と「金銭が発生する」場合の両方の意味が含まれるため、ちょっとややこしいことになるようだ。また、先に金額が提示されないことも認識のすれ違いを生む原因の一つだろう。「譲る」をめぐって他人と“すれ違い”を経験したことがある人、そして「譲る」という言葉を使ったことがある人の双方に、言い分を聞いた。
「フリマサイトで売るのは面倒」という理屈
メーカー勤務の20代男性・Aさんは、学生時代の友人から、「引っ越しするから、処分予定のもの、いらない?」と連絡を受け、いそいそと友人宅に向かったというエピソードを披露する。
「結婚を機に引っ越しする友人が、不用品を譲ってくれるとのこと。数年ぶりに友人に会えるという喜びと、僕にとって掘り出し物があるかもという気持ちでした。大画面テレビ、家具、ゲームソフトなどたくさんあると聞いて、テレビなんかはちょうど買おうと思っていたこともあり、タイミングがよかったんです」
車で友人宅に向かったAさんがいざ現場で品定めをしていると、友人から予想外の言葉が飛び出したという。
「テレビに『これ、もらっていい?』と聞いたら、友人は『いいよ。じゃあ、3万円ね』と。“いらないか”と言われたので、てっきりタダかと思っていたので一瞬動揺しました。すぐ、たしかに『あげる』とは言われていないと思い直しましたものの、正直3万円で買うんだったらいらないなという気持ちに……。
とはいえタダだと思った自分が恥ずかしくなってしまい、『え? タダじゃないの?』とは聞けませんでした。その後の雑談で、『フリマサイトに売るのは面倒だからさ』と言っていましたが、だからといって身近な人間をフリマサイト扱いしないでもらいたいと思いました(笑)。結局数点を買い取ることにしましたが、先に『買い取らないか?』と聞いてほしかったなあと今でも思います」(Aさん)