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モラハラ夫は「自分は常に正しくて賢い」という“正義”の姿勢で妻に接する 「至らない妻を指導」という制裁が快楽に【堀井亜生氏×中野信子氏】

弁護士として2000件以上の離婚・男女問題にかかわってきた堀井亜生さん

弁護士として2000件以上の離婚・男女問題にかかわってきた堀井亜生さん(撮影/平野哲郎)

友人関係が希薄なのもモラハラ夫の特徴

堀井:ええ、実は友人関係が希薄なのもモラハラ夫の特徴のひとつです。「そういえば結婚式に夫の友達がいなかった」と振り返る妻は多い。また、妻には高圧的なのに、実は打たれ弱く、私が少し反論しただけで泣き出す男性もいます。弱いからこそ、妻を外部から遮断し、自分より立場が弱い状態にし、そして上から当たるのでしょう。

 これまでパワハラやセクハラをする男性も見てきましたが、モラハラ夫と似ていますね。たとえばパワハラをする人は“正義”という名目で部下を指導しますが、モラハラ夫も「至らない妻を指導しただけ」と言いますから。

中野:そのような人は非常に狭い範囲のルールを“常識”と呼び、自分こそが“正義”だと思い込んでいる。その“正義”こそがモラハラをやめられない理由でもあるでしょう。人間は、他人に正義の制裁を加えているとき、脳の快楽中枢が刺激され、快楽物質であるドーパミンが分泌されます。この快楽にハマると簡単には抜け出せなくなってしまうんです。

堀井:たしかに、モラハラ夫は「自分は常に正しくて賢い」という“正義”の姿勢で妻に接していますね。

中野:「正義中毒」になると、自分と異なるものを悪と捉え、相手にダメージを与えるためにどんな言葉をぶつけるかばかり考えるようになってしまいます。SNSで他人にかみついて炎上させる人と同じです。

妻に刷り込まれる「対等ではない関係」

堀井:一方で、私の元へ相談しにいらっしゃる妻は「夫はすごく賢くて立派な人」だと思い込んでいる場合も多いのが実情です。

中野:妻は上から目線の言動を受け続けて対等ではない関係を刷り込まれ、自分自身のことを尊重できなくなっている、つまり自尊感情が低くなっているのでしょうね。

堀井:たいていの場合、夫側が「結婚してやった」という意識が強く、結婚当初から上下関係ができ上がっているんです。妻側にも、婚期を迎えて焦っていたとか、恋愛経験が少ないとか、おとなしい人が多いという共通点がある。

 また、親の育て方の影響もあり、「とにかく経歴がいい男性と結婚できればいい」と教えられてきたのかもしれません。

中野:そのような環境に身を置いてきたからこそ、モラハラを受けても「私が間違っているのかも」と思ってしまったりするのでしょう。でも、「私だけじゃない」と知る上でも堀井さんの著書の意義は大きいですね。

第3回に続く第1回から読む

【プロフィール】
堀井亜生(ほりい・あおい)/札幌市出身。弁護士。中央大学法学部卒。堀井亜生法律事務所代表。離婚・男女問題の取り扱い実績が多く、『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)のレギュラー出演をはじめ多くのテレビ番組に出演している。

中野信子(なかの・のぶこ)/東京都出身。脳科学者。フランス国立研究所ニューロスピンにて博士研究員として勤務(2010年帰国)。東日本国際大学特任教授。京都芸術大学客員教授。研究・執筆を中心に活動する傍ら、テレビやウェブメディアでもコメンテーターとして人気を集めている。

取材・文/音部美穂

※女性セブン2024年6月6日号

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