そこで、銀行を相手に預金の相続人として支払いを求める方法が考えられます。ところが、民法では「受領権者としての外観を有するもの(債権の準占有者)に対してした弁済」は、弁済者(この場合、銀行)が善意無過失だと有効になるとしています。
祖母Aと叔父Bでは性別も違い、別人であることは明らかです。しかし、そのような場合でも、厳重保管が本来期待される通帳や届出印鑑を持参して預金の払い戻しを求めた人物であれば、本人から手続きを頼まれるなどしている蓋然性が高いので、叔父Bの説明などに不審な点がなければ無過失と解される場合が少なくありません。
次に、叔父Bへの払い戻しが有効だとすれば、祖母Aは叔父Bに対して、勝手に引き出したお金について不当利得返還請求権または損害賠償請求権を生前に取得しています。この権利は相続財産です。あなたの母親と叔母は3分の1ずつ相続しているので、叔父Bに対して支払いを直接請求できます。
預金の払い戻しの経緯は、銀行に請求すれば開示されます。ただし、引き出しが多数回あった場合には、どれが叔父Bの無断引き出しかについて判断する必要があります。叔父Bが否定しても、払い戻しの際に作成された伝票などから特定することも可能ですから、弁護士に相談してください。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型
※女性セブン2024年6月6日号