「マンション管理はすべて管理会社にお任せ」はNG
そもそもマンションの管理とは、住民が安全かつ快適に生活できるように、建物や設備の状態を維持することだ。大抵の場合は、マンションの管理組合がマンション管理会社と契約し、清掃や設備の保守・点検などの業務を委託する。
またマンションの建物や設備は、定期的に大規模修繕工事や交換が必要になる。建物の規模や工事内容にもよるが、1回の大規模修繕工事にかかる費用が億単位になることも珍しくない。誰がこの費用を負担するかといえば、もちろんマンションの住民だ。計画的に準備するために、毎月徴収するのが「修繕積立金」。こうしたお金の管理や工事の受注も、管理会社が担う。
管理会社はマンション管理のプロであり、ほとんどのマンション住民は「すべて管理会社に任せておけばいい」と思っているかもしれない。たしかに、管理会社に任せておけば資産性の維持は可能だ。しかし、昨今は人手不足などの影響で管理会社の手数料が上昇。また、大規模修繕工事の費用も、資材価格や人件費の高騰などから値上がりしている。そのため、管理会社に唯々諾々と従っていると、管理費や工事費用の値上げを容認せざるを得なくなる。「それでもまったく問題ナシ」という、富裕層ばかりの一部ハイグレード物件を除くほとんどのマンションでは、負担増は受け入れがたいはずだ。
「“全部管理会社に任せたい。でも負担は増やしてほしくない”は通りません。少しでも負担を抑えたいなら、管理組合が積極的にマンション管理に関わって、コストの見直しなどの方策を考える必要があるでしょう」
管理組合には、物件を区分所有している住民全員が参加することになっている。しかし、実際には多くの人が「輪番制で回ってくる管理組合の理事をやりたくない」「(年1回の)管理組合の総会に出席するのが面倒くさい」など、管理組合に関わることを極力避けたいと思っている。管理組合総会の参加者は、平均で3割強というデータもあり、残りの7割は委任状を提出して終わりだ。
分譲マンションは住民全員が共有する資産なので、本来は皆がマンション管理に興味を持ち、資産性を高めるべく協力し合うのが理想。管理会社はマンション管理の良きパートナーではあるものの、住民が負担するマンション管理費や工事費用によって利益を得ているため、常に住民と同じ方向を向いているわけではない、ということも理解しておくべきだろう。