住まい・不動産

「管理費値上げは断固拒否!」理事の暴走でモメた挙げ句に管理会社と契約打ち切りの悲劇も マンションの資産性を維持するため住民に何ができるか

マンションの管理費、修繕費は年々値上がりしている

マンションの管理費、修繕費は年々値上がりしている

自らの力で収入を増やす取り組みをしている管理組合も

 管理会社は営利企業なので、管理費や工事の受注で利益を上げようと考えるのは当然だ。また、目下のインフレなどの状況を考えれば、管理費などの値上げ提案にはやむを得ない部分もある。しかし、一部の管理組合理事などが「値上げは不当だ!」と管理会社に噛みつき、モメるケースもある。

「実際には、根拠のない値上げを持ちかける管理会社はほとんどありません。ですが、管理組合の理事会で管理会社から値上げを提案されて、カッとなってしまう理事もいます。通常はマンション管理に興味がないのに、値上げだけは断固拒否、という考えの人は多いもの。モメた挙げ句、管理会社側から契約を打ち切られてしまうこともあります。別のもっと安くて良い管理会社を見つければいい、と思うかもしれませんが、料金を上げないとやっていけないのはどこの管理会社も同じ。一昔前まで管理会社は“買い手市場”でしたが、今は“売り手市場”に変わっているので、替えを探そうにも、そう簡単には条件に合った管理会社を見つけられないでしょう」

 理事の一人がカッとなって暴走しても、ほかの住民が抑えればいいのだが、住民の多くが“サイレントマジョリティ(物言わぬ多数派)”だと、声が大きい人を抑制しづらくなる。結果、“モンスター住民”(過度なクレーマーなど)が好き勝手に振る舞うことも起こりがちだ。マンションの規模が大きくなるほど、モンスターの紛れ込む確率は上がる。そんなモンスターの横暴を許していると、マンション管理の質はますます低下していく。

「こうした事態を防ぐためにできるのは、やはりマンションに住む人全員が管理に関心を持つこと。最低でも管理組合総会には必ず参加する。組合理事の当番が回ってきたら、前向きに管理について学んだり、総会の参加者を増やすように働きかけたりすることも大切です」

 実際、「自分たちの資産は自分たちで守る」という意識を持って、管理組合が積極的に活動しているマンションもある。そのようなマンションでは、管理費や修繕積立金の値上げを抑えるために、さまざまな対策をしている。たとえば、管理会社に依頼する業務の見直し。具体的には、これまで年4回だった定期清掃を年3回にしたり、管理人さんの勤務時間を朝⇒夕から午前中のみに変更したりして、コストを削減している。

 マンション敷地内の空いているスペースを活用し、収入を増やす取り組みをしている管理組合もある。よくあるのは飲み物の自販機の設置だが、そのほかにゴルフのシミュレーターを置いたり、トランクルームを設けたりして手数料を稼いでいる事例も。管理人の住み込みを廃止後、空いた管理人室を改装して賃貸に出し、家賃収入を得ている事例もある。

 つまり、工夫次第でマンション管理にかける費用を減らしたり、補填したりできる可能性はあるのだ。自分の住んでいるマンションの管理に不安を覚えたら、管理組合に掛け合ってマンション管理士などに相談し、マンションの資産性を維持するために何ができるか、一度考えてみるといいかもしれない。

不動産コンサルタント・長嶋修さん

不動産コンサルタント・長嶋修さん

【プロフィール】
長嶋修(ながしま・おさむ):1976年東京都生まれ。不動産コンサルタント。さくら事務所会長。1999年、不動産コンサルティング会社「さくら事務所」創業。著作に『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』など多数。最新刊は『マンションバブル41の落とし穴』。

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