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【旧財閥系デベロッパー戦争】三井vs住友vs三菱、それぞれの開発エリアの「境界」が消滅へ 金利のある世界で「薄氷のビジネス」に直面

都心3区に続々「旧財閥デベロッパー物件」

都心3区に続々「旧財閥デベロッパー物件」

 日本の不動産バブルの行方はどうなるのか──。幅広い産業に裾野を広げ、その動向が日本経済の浮沈を左右するともいわれる、ある巨大企業グループ。5月某日、そのグループ企業の最高幹部らが集まる会で、一編のレポートが共有された。

 レポートは「今後の不動産動向について」といった見出しだったが、その内容は日本の不動産バブル崩壊を警告するものだったという。そこには、以下のような見通しが記されていたという。会に参加した人物から内容を聞いた経済誌記者が言う。

「早ければ2024年中、遅くとも2026年には日本の不動産バブルは終焉する。グループとしても対策を講じる必要がある──そう締めくくられていたと聞きました。食事を交えた懇親会のような場ですが、不動産バブル終焉のリスクが議題になったようです」

3社による国盗り物語に変化

 近い将来への警鐘が鳴らされるなか、現下の不動産業界は活況を呈す。都心部で熾烈な争いを続けるのが、三井不動産、住友不動産、三菱地所の旧財閥系デベロッパーだ。

 3社は2024年3月期決算でいずれも過去最高益を記録。純利益2246億円(前期比14%増)の三井不動産の首位は揺るがないが、「万年3位」と揶揄された住友不動産は同1772億円(前期比9.4%増)で三菱地所(同1684億円)を抜き2位となった。

 三井不動産OBで『なぜマンションは高騰しているのか』著者で経済・社会問題評論家の牧野知弘氏が語る。

「デベロッパーのグループ全体として三菱がオフィス中心、三井と住友はオフィスと住宅(マンション)開発の両輪です。主な開発エリアもかつては三菱が大丸有(大手町、丸の内、有楽町)で、住友は新宿周辺に強く、六本木や神田、大手町周辺にも進出した。私がいた頃の三井は日本橋や八重洲、日比谷、霞が関を“領域”とし、3社による国盗り物語のような様相でした」

 近年はそうした「境界」がなくなりつつあるという。東京駅周辺では2015年、住友が三井の本拠地である日本橋に「東京日本橋タワー」を竣工。対する三井は2018年、そのすぐ隣に「日本橋高島屋三井ビルディング」を開業した。八重洲口北側の再開発では三菱がTOKYO TORCHプロジェクトを進行中だ。

 今後、引き渡し予定の都心マンションでも、図の通り千代田、中央、港の都心3区で鎬を削る。富裕層に人気の千代田区番町エリアでは、三井が「パークコート ザ・三番町ハウス」を2025年11月に竣工させ、三菱は「ザ・パークハウス グラン 三番町26」の引き渡しを今年11月に予定する。晴海フラッグで建設中のタワー棟は三井が手掛け、同じ中央区で住友は「グランドシティタワー月島」を2026年に竣工する予定だ。

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