“夢の定年後移住”が暗転
10年ほど前までは“夢の定年後”などとして、メディアでも「タイ移住」をよく取り上げていた。だが、移住したリタイア組も、物価上昇と円安のダブルパンチに苦しむ。ロングステイ日本人倶楽部の元世話役代表・細野文彬氏は話す。
「貯金で旅行したり、日本食を食べたり、オネエちゃんとリゾートに遊びに行ったりしていたが、全然できなくなりました。80歳になりましたが、年金などの収入は月25万円ほど。そのうち2割は貯金できていたのですが、円安のため目減りしてカツカツです」
生活に窮してタイから撤退し、日本に帰国する人も増えているという。
「ただ、人によっては全財産を処分してタイに来ているので、そういう人は帰ってからどうするんだろうなあ、と」(同前)
日本人は物価の上がったタイを避け、タイ人が円安を追い風に日本で旅行を楽しむ。そんな「逆転現象」が進んでいる。
取材・文/室橋裕和(ライター)
【プロフィール】
室橋裕和(むろはし・ひろかず)/1974年生まれ。ライター。週刊誌記者を経てタイに移住。10年にわたりタイ及び周辺国を取材する。近著『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』(集英社新書)が話題書に。
※週刊ポスト2024年7月12日号