2024年3月期における日本銀行の財務諸表をみると、総資産756兆4231億円の内、国債が589兆6635億円あり、総資産の78%を占める。負債側では、純資産は5兆8357億円で7%に過ぎず、発行銀行券は120兆8799億円で16%、預金は599兆253億円で79%を占める。そのほか注意すべきリスクとして、指数連動型上場投資信託などの金銭信託が37兆1862億円(総資産の5%)ある。現在は含み益が発生しているだろうが、市場が急落した場合、評価損が発生するリスクがある。
日本銀行の植田和男総裁は今年2月22日、衆議院予算委員会において「金利全般が1%上昇した場合、保有国債の評価損は40兆円程度発生する」と答弁している。
2024年3月期における経常収益は5兆859億円、経常利益は4兆6400億円、当期剰余金は2兆2872億円といった収益規模と比較すると、金利上昇は日本銀行にとって大きな痛手となる。
日本の金融市場では、圧倒的な資金力を持つ欧米系機関投資家が価格形成において優位に立っており、彼らのバリュエーションが重要な意味を持つ。日本銀行が債務超過に陥るようなことにでもなれば、彼らはそれをどう評価するのだろうか。定量的なデータ分析を基に投資行動を取る欧米系機関投資家は、その事実だけをもって円を売り浴びせてくるようなことはないだろうか。そうなれば円安はインフレを誘引し、インフレは円安を引き起こす。日本の金融行政は難しい局面に置かれている。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。