小林製薬は今、最大の危機を迎えている。3月に紅麹サプリによる健康被害の問題が発覚、初動の遅れにより被害を拡大させたと批判が集まった。6月末には摂取後に亡くなった76人について因果関係を調査中と判明し、事態は深刻化している。
創業家・小林家は、創業105年目を迎える小林製薬に君臨し続けてきた。今回の危機の背景に創業家による経営の影響があるとみるのは、経済ジャーナリストの有森隆氏だ。
「48年間にわたり代表取締役として君臨する小林一雅会長(84)は、社内で絶対的な存在として強い決定権を持つとされます。その結果、非常に内向きな企業体質が生まれ、4人の社外取締役に紅麹問題が伝えられたのは最初の症例把握から2か月あまり経った記者会見当日でした。一族の経営をチェックする立場の社外取締役を軽視する姿勢が浮き彫りになりました」
小林製薬はこれまで無借金経営で26期連続の増益を達成した優等生企業。財務基盤は極めて良好だが、今後は被害者への賠償金が重くのしかかる。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が語る。
「ワクチンや医薬品による健康被害は国が補償する制度があるが、紅麹などのサプリは食品と同じ扱いになるため、公的に救済する仕組みがない。賠償額は症状の度合いによって異なるが、亡くなった方には1人数千万円レベルと考えられる。台湾では消費者団体が集団訴訟を起こしており、同様の動きも考えられる」