7月3日、厚生労働省は公的年金の将来について5年に一度、試算を行なう「財政検証」の結果を公表した。将来の人口推計や経済状況によって、年金制度の持続可能性を検証するものだが、少子高齢化に歯止めがかからないなか、年金給付水準の見通しは明るくない。受給者一人ひとりが「年金をどう増やすか」の工夫を考えることが必要な時代となっている。
厚労省の公表資料によれば、2024年度の夫婦2人世帯のモデル年金(夫婦2人の基礎年金+夫の厚生年金)は月額22.6万円。現役世代の男性の平均手取り収入(月額37万円)に対する割合である「所得代替率」は61.2%となっている。財政検証では、この所得代替率が将来にわたってどのように推移するかがシミュレーションされている。
2034年度以降の30年間平均の実質経済成長率が1.6%となる「高成長実現ケース」では、2039年度時点の所得代替率は56.9%になるとされている。一方、過去30年の経済状況を投影した現状からの横ばいの推移を想定した場合、所得代替率は50.4%(2057年度)まで落ち込むとされている。現在の所得代替率から約2割減となる水準だ。ベテラン社労士が言う。
「政府はこの結果でも“現役世代の収入の半分にあたる年金収入が維持される”と喧伝しますが、そもそも『所得代替率』の定義にトリックがあり、年金収入は税金や社会保険料が引かれる前の『額面』の数字で、現役世代の収入は天引き後の『手取り』の数字を使っている。分母(現役世代の収入)が小さく、分子(年金収入)が大きくなるようにした数字であり、手取りで比べれば現役世代の収入の半分を割り込むということになります」