田代尚機のチャイナ・リサーチ

【最大手でも利益が出せない】中国の産業全体に広がる「生産能力過剰」問題、先進国の批判も改善は困難

太陽光パネルで最大手・ロンジソーラーの工場(Getty Images)

太陽光パネルで最大手・ロンジソーラーの工場(Getty Images)

 先進国は中国クリーンエネルギー産業の過剰生産を非難している。6月13~14日の日程で開かれたG7サミットでは「中国の非市場的政策、慣行が生産能力の過剰を生み出し、市場を歪め、G7各国の労働者、産業、経済的強靭性と安全保障を損なっている」などと厳しく批判、米国、EUなどは、相次いで電気自動車の対中輸入関税を引き上げると発表した。

 過剰生産で影響を受けるのは外国企業だけでない。中国本土企業の経営も逼迫させている。

 クリーンエネルギー産業の中で過剰生産が最も顕著なのはソーラーパネル産業だ。世界最大手のパネルメーカー・隆基緑能科技(ロンジソーラー・上海A株)の株価をみると、この2年間、厳しい下落トレンドを形成している。

 2022年7月1日の場中で記録した67.43元を天井として今年7月9日には場中で安値12.61元を記録、この間の下落率は8割を超える(過去最高値は2021年11月1日に場中で記録した高値73.03元、株価はいずれも修正株価)。7月15日現在、少し戻しているが、それでも終値は13.89元に留まっている。

 株価低迷の要因は急激な業績の悪化だ。売上高をみると記録の取れる2008年以降、2022年までの間、2012年を除き毎年2桁増収を続けていた。2022年の売上高は1289億9800万元(2兆7993億円、1元=21.7円で計算)で、10年間の年平均成長率は54%に達している。しかし、2023年は0.4%増収24.8%減益となり、業績拡大に急ブレーキがかかっている(2022年は60%増収、63.8%増益)。四半期ベースで追ってみると、2023年7-9月期から減収減益に陥っており、2023年10-12月期、2024年1-3月期はいずれも赤字に陥っている。

 ソーラーパネル産業の過剰生産は10年以上前から指摘されている。しかし、これまでは、規模の小さな企業の淘汰、大手による吸収など、産業構造調整が進む中で、業界トップの同社は、製品の品質向上、規模拡大によるコストダウンなどによって、不断に進む価格低下を吸収し、業績を伸ばしてきた。しかし、ここにきて、最大手の同社ですら利益の出せない事態に陥っている。

次のページ:国家が積極的に産業発展を促す構図

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。