いずれも私邸のため一般公開はない
莫大な管理費がかかることもあって持ち主は時代ごとに変わってきた。
「真々庵」は明治期の綿花商・染谷寛治から松下幸之助に渡り、現在はパナソニックが所有している。ほかにニトリやオムロンなど大企業が保有するケースが多いが近年、ビジネス界の寵児たちが取得して話題を呼んだ。
米ソフトウェア大手オラクル創業者のラリー・エリソンがオークションに最低価格80億円で出品された「何有荘」を購入したのが2010年。初の外国人所有者となった。
2018年にはZOZOの前澤友作社長(当時)が「智水庵」を、2020年にはユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正会長が「洛翠」を購入。洛翠は長年、郵政省の保養施設として活用されていたが、2011年に調剤薬局チェーン大手・日本調剤が取得、その後、柳井会長の手に渡った。
いずれも私邸のため一般公開はなく、内部を窺い知ることはできないが、前澤氏が購入後、庭園の一部をSNSにアップして注目を集めた。街全体が風致地区条例や景観条例で厳格に管理されており、今もなお時代劇さながらの風情が漂っている。
「10メートル超の建物は建ててはならず、屋根やフェンスの色も黒系のみなどと『京都市風致地区条例施行規則』で細かく決められている。エアコンの室外機は、格子状の板などで目隠しをしないと屋外に置けない場合もある。建物を新築・改築する際には市長の許可が必要で、違反すると50万円以下の罰金が課されます」(前出・地元住民)
成功者たちも、そうした歴史と文化の重みに惹かれたのだろうか。
※週刊ポスト2024年8月2日号