「推し」「推し活」という言葉が、すっかり市民権を得るようになった。「自分の好きなエンタメ関連の『追っかけ』をしたり、グッズを熱心に買う」という人も少なくないのではないか。とはいえ「推し活」が定着したことで、逆に「推し」がいない人が肩身の狭い思いをすることもあるようだ。「趣味はあるが、推し活はしていない」というネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、推し活の本質について考察した。
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最近は「オシノミクス」なる言葉も生まれているようです。単なるコンテンツ消費に留まらない「推し活」にまつわる経済効果も期待されているわけで、雑誌『DIME』9・10月号でも『「オシノミクス」を徹底解剖! ヒット商品は「推し」が9割!』と特集して、「BTS」「Aぇ!Group」「大谷翔平」「石川祐希」「JO1」「鬼滅の刃」「名探偵コナン」「エヴァンゲリオン」「ウマ娘」「Juice=Juice」……などの名前が挙げられています。
エンタメコンテンツと特定個人やグループに対して思い入れのある人々が多額のカネを使っている、ということのようですが、一方で「推し」がいないことで、肩身が狭い思いをする人もいるようです。30代女性・Aさんはこう語ります。
「最近よく『推しはいるの?』と聞かれます。私は小説が好きで、Kindleで海外モノの古典ともいえるミステリ作品をダウンロードしています。だから『アガサ・クリスティとかかな』と答えると『それは推しじゃないよ。あなたは推しがいないよ』と言われます。どこか侮蔑されたようなニュアンスを感じますが、『推し』がいないと今はバカにされるのでしょうか?」
いまや「推しがいなくては人生を楽しめない!」とツッコミを入れる人もいるのが現実なのです。いや、推しがいなくても十分、人生を楽しめるでしょう。