中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

【推し活・オシノミクスを考える】かつての「ヲタ」が「推し」になって変わった空気感 「それで人生楽しいの?」に辟易とする

やっぱり呂布は最強!『3DS三國志』の武力パラメーターはダントツ(筆者撮影)

やっぱり呂布は最強!『3DS三國志』の武力パラメーターはダントツ(筆者撮影)

私の「ブルズ」「阪神」「3DS三國志」は「推し」なのか?

 しかし、「推し」という言葉が生まれてから色々なことが変わったように思います。「推し」がいないと「人生楽しいの?」的な質問を受けたりするなど、「推し」がいない人の肩身が狭くなった。「ヲタ」の時は社会からのプチ差別を感じた人も、「推し」になって「当たり前感」を享受できるようになりました。すると、特段「推し」を押し付ける気はないのでしょうが、「推し」がいない人に対して平然と「なんで『推し』がいないの? 『推し』がいると楽しいよ~」的な空気を醸し出す。正直ウザい。人の趣味にいちいち口出しするな。

 さて、私自身のことを考えてみると、私の「推し」的なものは「1987~1993年のNBA・シカゴブルズ」「阪神タイガース」「ニンテンドー3DSの『3DS三國志』」となります。ただ、これらは大好きですが、「推し」とはならないと思います。

 なにしろ、この中でカネを使っているのは、阪神のホームゲームを中継する「虎テレ」への月額660円の課金だけなのですから。ブルズについては、YouTubeで懐かし動画を見るだけですし、『3DS三國志』はソフト購入時以外の課金はない。

 結局、「推し活」というのは、継続的にその存在にカネをつぎ込んでナンボ、というものではないでしょうか。それが悪い方向に向かえば、「依存症」「中毒」ということにもなりかねません。キレイな言葉で「推し」と言って、なんとかカネを稼ぎたい方々に乗らされている面もあるように思います。もちろん、当人が幸せな気持ちを味わっている限りは、こちらから言うことは何もありませんが、せめて「推し」がいない人をバカにしたりしないでほしいものです。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など多数。最新刊は『日本をダサくした「空気」』(徳間書店)。

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