世界が注目した中国三中全会だが“どう評価したら良いのかわからない”。これが声明文を読んで感じるグローバル投資家の率直な感想なのではなかろうか。
それは本土投資家にとっても同じであろう。7月18日に閉会、直後から翌朝にかけて複数のマスコミがその概要を伝えている。「中国共産党中央委員会による更に一歩進んで全面的に改革を深化させ、中国式現代化を推進することに関する決定」が審議され、会議を通過したと報じており、19日午前には中央委員会による記者会見が行われ、会議の意義、決定の解釈などが詳しく説明されている。
これに対して19日の本土株式市場の反応は鈍かった。セクター別でみると不動産、自動車が売られた一方、半導体、軍事産業、一部のインフラ関連などが買われたが、その理由は三中全会によるとは言い切れない。上海総合指数は安寄りしたものの、場中は戻り歩調となり、終値では前日比プラス(0.17%高)に転じた。その一方で売買代金は6698億元に留まっている。大商いの目安となる1兆元を大きく下回っているばかりか、閑散商状であった17日、18日の売買代金すら下回っている。事前の注目度が高かっただけに“期待外れ”の感が否めない。
マルクスレーニン主義、毛沢東思想、トウ小平理論から始まって習近平総書記による全面深化改革に至るまで、一連の思想、観点、論断をベースにして書かれている“決定”の全文をそのまま翻訳しても、西側諸国のアナリストたちにとっては抽象的過ぎてわからない。そもそも、共産党は一体どのような国家を作り上げたいのか、その全体像すらイメージできない。
「第四次産業革命」に労働力、資本、技術を集中させる
その点についていろいろ調べてみたが、北京大学国家発展研究院の林毅夫教授による解説(新浪財経)がわかりやすい。林毅夫教授は台湾出身ながら、北京大学で経済学修士課程を修了しており、その後、シカゴ大学で学位(博士)を取得、北京大学中国経済研究センター主任、世界銀行チーフエコノミストなどを歴任している。以下、中国の長期の発展戦略の大きな枠組みの部分について、こちらで一部補足しながら、林教授の解説を紹介する。