田代尚機のチャイナ・リサーチ

世界が注目した「中国三中全会」、“決定”全文を読んでも理解しにくい「成長戦略の枠組み」をわかりやすく解説

 現在の世界は第四次産業革命のさなかにある。AI、量子コンピュータ、ロボット、ビッグデータ利用、モノのインターネット、自動運転、ナノテクノロジー、遺伝子工学、バイオテクノロジーなど、人々の生活、働き方、社会の在り方そのものを劇的に大きく変える可能性が高いとみられる新たな技術が一斉に発展しようとする時代だ。4度目となる今回の産業革命では、初めて先進国と同じスタートラインに立った位置から競争に参加することができる。このチャンスをものにすることこそ、2049年の建国100周年の時点で社会主義現代化強国を建設し、中華民族の偉大な復興を成し遂げることに繋がる。

 習近平国家主席は2023年7月、四川省を視察した際に初めて“新たな質の生産力”という言葉を使ったが、これは、狭義にはAIとか量子コンピュータとか最先端の技術を指す。こうした新たな質の生産力が戦略的新興産業の一部となったり、別の戦略的新興産業の発展を牽引したり、あるいは伝統的産業の技術革新をもたらしたりする。

 先進国との激しい競争は避けられず、米国を中心に欧米社会は中国とのデカップリングを進めかねない状況だ。そうした圧力を跳ね返し、自力で第四次産業革命を勝ち抜かなければならない。

 第四次産業革命に焦点を当て、そこに労働力、資本、技術を集中させる。そのための目標とする具体的な産業を国家が示し、補助金を出し、金融市場からの支援を強力にバックアップし、積極的に研究開発を促し、事業化を奨励する。

 この30年間の名目GDP(ドルベース)の伸びをみると米国の4倍に対して、中国は29倍、日本は7%減であった(2023年と1993年を比較、IMF)。過去10年で比較しても米国の1.6倍に対して中国は1.8倍、日本は19%減と中国の高成長は変わらない。

 結果だけをみれば、国家が明確な発展戦略を持ち、市場経済を最大限に取り入れながらも、強権を以て目標に向かって社会全体を最適化しようとする試みが今のところ成功していると言わざるを得ない。

 投資家は足元の景気や、不動産バブルの行方ばかりに気を取られがちだが、社会主義国家における景気変動、資産価格の急騰に関する評価分析について、自由主義国家におけるそれと同じようにすべきではないのかもしれない。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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