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《M&A花盛りの外食業界》ゼンショーのロッテリア買収で生まれた「ゼッテリア」、吉野家は京樽を売却…米カーライルの100%子会社化で日本KFCはどう変わるか

運営会社の買収で「ケンタッキーフライドチキン」の味や店舗運営が変わるのではと心配する声もある

運営会社の買収で「ケンタッキーフライドチキン」の味や店舗運営が変わるのではと心配する声もある

「ケンタッキーフライドチキン」を運営する日本KFCホールディングスが米投資ファンドカーライルの完全子会社となることが決まった。ケンタッキーを愛するファンのなかからは、「味が変わってしまうのでは」と不安がる声が聞こえてくる。

 近年、外食業界では企業の買収や合併(M&A)の事例が多いが、どんな背景があり、消費者や従業員にはどんな影響があるのか。そして、日本KFCの買収により、ケンタッキーフライドチキンの「変わらぬおいしさ」は変わってしまうのか──。フリーライターの池田道大氏がレポートする。

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 外食産業における買収事例は、カーライルと日本KFCに限らない。今年に入ってからも、牛丼チェーン・吉野家を展開する吉野家ホールディングスがラーメン店向け商材製造の宝産業を、ステーキレストランチェーンを運営するブロンコビリーがとんかつ専門店運営のレ・ヴァンを、複数の外食事業会社を傘下に持つコロワイドが日本銘菓総本舗を買収している。

 コロナ禍による業績落ち込みに加えて、物価上昇や人手不足などの影響で苦境が続く外食産業でM&Aが多発するのは、企業の生き残り戦略の表れでもある。『外食入門』(日本食糧新聞社)の著者で、フードサービスジャーナリストの千葉哲幸さんが言う。

「以前は単一業態を多く展開する単一業過多店舗展開が主流でしたが、近年は多様化する消費者のニーズに応えるための多業種多店舗展開が広がり、M&Aによるポートフォリオ化が進んでいます。『すき家』『なか卯』『ココス』『はま寿司』『華屋与兵衛』など幅広い業種を展開するゼンショーホールディングスがその好例です」(千葉さん)

外食業界で「規模の経済」が発揮しづらい理由

 一般にM&Aによって事業規模が大きくなると、単位当たりのコストが低くなる「規模の経済」が発生して、競争上有利になるとされる。だが、日本経済新聞編集委員の田中陽さんは、「外食産業では規模の経済がなかなか発揮できない」と語る。

「以前、吉野家が京樽を子会社化したことがありました。ところが同じお米でも、牛丼のつゆだくがおいしく食べられるお米と、すし酢に合うお米は全く違う。仕入れ先を同じにして仕入れコストを下げようとの目論見がうまくいかず、結局、別々で仕入れることになりました」

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