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《M&A花盛りの外食業界》ゼンショーのロッテリア買収で生まれた「ゼッテリア」、吉野家は京樽を売却…米カーライルの100%子会社化で日本KFCはどう変わるか

今後も創業者カーネル・サンダースの「おいしさへのこだわり」を貫けるか

今後も創業者カーネル・サンダースの「おいしさへのこだわり」を貫けるか

モスバーガーやロイヤルホストのような「創業の精神」を貫けるか

 外食産業のM&Aの命運を分けるのは「創業の精神」でもあると田中さんは言う。

「モスバーガーは創業者の1人である櫻田厚さんの“感謝される仕事をしよう”との精神を受け継ぎ、ロイヤルホストを擁するロイヤルグループも“食を通じて国民生活の向上に寄与する”という創業時の思いを貫いて、群雄割拠のファミレス業界で輝いています。

 決して高給とは言えない外食産業で働く人の中には、創業者の経営理念が好きで働く人が一定数います。M&Aでそうした創業の理念や創業者の思いの部分が薄くなると、ブランドはいずれ立ち行かなくなるのではないでしょうか」

日本KFC買収の成否を左右する「フランチャイズオーナー」の動向

 カーライルによる日本KFC買収で田中さんが危惧するのも「ケンタッキーを愛するオーナーたち」の反応だ。

「日本KFCのフランチャイズオーナーたちはみんなケンタッキーが大好きで、ケンタッキーの理念に共鳴してオーナーを続けています。なのでカーライルが無理な出店攻勢をしたり、伝統の味を変えるようなことをしたら、“もうついていけない”と離脱するオーナーが続出しても不思議ではありません。カーライルはいくつもの外食企業の再生を手掛けており、フランチャイズビジネスの難しさも熟知しているはずです。ケンタッキーが内部崩壊しないような舵取りが求められます」

 もちろん、買収によってカーライルが持つ企業価値向上のノウハウが発揮され、日本KFCが飛躍的な成長を遂げるかもしれない。しかしその過程で創業者であるカーネル・サンダース氏と日本KFCが守ってきた“変わらぬおいしさ”が変わってしまったら──そう心配する熱心なファンに、日本KFC広報はこう呼びかける。

《KFCに受け継がれるいつまでも変わらぬおいしさを守り届け続けるため、この先も、創業者カーネル・サンダースの想いである「おいしさへのこだわり」を受け継ぎながら、更なる成長を目指し、お客様に信頼され、愛されるブランドを目指して参ります》

 カーライル傘下による日本KFCの公開買付け(TOB)の成立で、カーライルは9月下旬までに日本KFCの株式100%を所有する予定となった。はたしてケンタッキーの味は変わってしまうのか。答えが出る日は、そう遠くない。

取材・文/池田道大(フリーライター)、写真提供/日本KFCホールディングス

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