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このまま「路線バス」の廃止・減便が進むと日本各地が“陸の孤島”だらけになる

バス運転手は2030年に3.6万人不足

バス運転手は2030年に3.6万人不足

税金投入で維持できる時代は終わった

 バス運転手の不足に対してはさまざまな対策が始まっているが、いずれも決め手に欠く。政府内では外国人の活用を検討しているが、日本のような左側通行の国ばかりではない。慣れるには時間がかかるだろう。バス運転手は乗客対応も必要で、言葉の壁も問題となる。

 東京23区などでは、利用者の事前予約に基づいて運行やルートやダイヤを決める「デマンド交通」の導入に向けた動きが広がっている。路線バスが通れないような狭い道を走行するため、車種はタクシーやワゴン車を使用するのが一般的だが、これでは路線バスのように大量に人を運べず、運賃を少し高めに設定したとしても黒字化は難しい。このため実験段階で断念するケースが少なくない。

 自動運転バスも問題の根本解決にはならない。そもそも、人が運転するバスと遜色ない存在となるには、まだ乗り越えなければならない技術的課題がたくさん残っている。仮に自動運転の技術が短期間で飛躍的に向上することがあったとしても、過疎化が急加速で進行する地域にまで普及させるには膨大な予算とマンパワーを要する。

 路線バスが縮小に追い込まれている根本原因は人口減少による利用者不足であり、運転手不足は二次的な理由だ。自動運転のバスを走らせるのには新規のバス購入に加え、システムのメンテナンス費用もかかる。これらを誰が負担するのか。

 目先の対策として、地方自治体の中にはバス会社への補助金額を増やしたり、自前でコミュニティーバスの運行を始めたりするところが少なくないが、利用者数が長期的に減少していくことを考えると、こうした手法もずっと続けられるわけではない。税金投入で公共交通網を何とか維持してきた時代は終わった。

 もはや「毛細血管」である路線バスをすべて残すことは難しい。政策を講じるにしても、メリハリをつけるしかないだろう。

『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)

『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、最新の統計データに独自の分析を加えた未来図を示し、これからの日本が人口減少を逆手に取って「縮んで勝つ」ための方策を提言している。

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