人口が激減する地方ほど減便や廃止の対象になりやすい
このままパイロットが大量退職を始める2030年を迎えたならば、縮小や撤退をせざるを得ない路線が出てくるだろう。鉄道や路線バスにおいて減便や廃止の動きが広がっているが、航空会社も営利企業である以上、事情は変わらない。
経営の合理性から判断すれば、国内線、国際線とも大きな利益を期待できる路線を優先し、利用者の少ない便から縮小が始まることだろう。
例えば、航空機の駐機場への誘導、燃料給油といった「ランプ業務」と、手荷物の預かりや仕分けなど「旅客ターミナル業務」、荷物を航空機に搬送し貨物室への積み下ろしを行う「貨物ターミナル業務」を行うグランドハンドリング(グラハン)事業者には地元企業が少なくなく、若い世代が少ない地方都市ほど従業員確保が難しくなるためだ。
そうでなくとも人口が激減する地方は航空需要そのものが減り、減便や廃止の対象になりやすい。今後は、1週間に数往復しか旅客機が飛ばない「開店休業」状態の地方空港が珍しくなくなるかもしれない。
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、最新の統計データに独自の分析を加えた未来図を示し、これからの日本が人口減少を逆手に取って「縮んで勝つ」ための方策を提言している。