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適切なインプラント治療を見抜くポイント 「高額手術の判断を急かされたら疑うべし」「インプラント周囲炎の説明はあったか」「専門医は存在しない」

日本のインプラント治療を牽引している小宮山彌太郎氏が適切なインプラント治療を見抜くポイントを紹介

日本のインプラント治療を牽引している小宮山彌太郎氏が適切なインプラント治療を見抜くポイントを紹介

 近年、歯科治療の現場で、杜撰な治療が横行していることをご存じだろうか。歯を失った時に選択肢であるインプラントにおいても、患者がデメリットを被るような治療もあるという。『やってはいけない歯科治療』の著者で、“歯科業界に最も嫌われるジャーナリスト”の異名を持つ岩澤倫彦氏(ジャーナリスト)が、知っておくべきインプラント治療の実情についてレポートする。

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 歯を失った時、入れ歯やブリッジに次ぐ第三の選択肢がインプラント治療である。チタン製の人工歯根(インプラント体)を手術で歯槽骨に埋め込み、結合するまで数か月待つ。それから支台を連結して、セラミックなどの人工歯を装着する。

 インプラント治療の長所は、何よりしっかりと食事を楽しめること。そして外見からは天然歯と見分けがつかず、日常生活でインプラントを意識することもない。他方、短所もあり、費用は1本あたり60万円前後と高額なうえに手術によるリスクもあり、時として、「神経の損傷」「上顎洞内にインプラント体が迷入」などの後遺症も報告されており、稀ではあるものの、手術に起因した死亡事故も発生している。

 ただし、現在では医療DXの進化によってトラブルは激減している。CTデータから3D画像を生成して、事前のシミュレーションが可能になった。手術では、マウスピース状の器具をガイドとして、インプラントの位置、深さ、角度などを指定して、ミスを防いでいる。だが、インプラントの罠は今も存在する。見抜くポイントはどこにあるか。

【1】「抜歯してインプラントしかない」は疑え

「歯根の先に膿が溜まっているので、抜歯してインプラントにしましょう」。筆者は歯科医からこう言われて、8年が経つ。その後、丁寧な根管治療を受け、抜歯を宣告された歯は今も健在である。

 抜歯の原因は「虫歯や歯周病の悪化」「歯根破折」などがあるが、適切な治療で回復することもあるのだ。日本のインプラント治療を牽引している、小宮山彌太郎氏(ブローネマルク・オッセオインテグレイション・センター院長)は、こう述べる。

「抜歯してインプラント治療を提示されたら、メリットやデメリット、そして他の選択肢についても詳しく確認してください。セカンドオピニオンを受けて検討することも大切で、その際に治療の決断を急がせるような歯科医には注意が必要です。すぐにインプラント治療が必要というケースは、まずありません。納得がいくまで検討してください」

【2】「すぐに手術」は危険

 最近の傾向として、「即日インプラント」「手術後すぐ噛める」など、治療期間の短さを謳う歯科医院が多くなった。通常のインプラントは、半年ほどかけて行なう。その理由について小宮山氏は次のように解説する。

「インプラント手術をして仮歯を装着すれば“すぐに噛む”ことはできます。ただし、歯槽骨が丈夫であるなどの条件を選ぶ治療であり、誰にでも可能ではありません。目先の利点よりも長い人生を考えるならば、日数を要しても、骨とインプラントとの結合を確実にすることのほうが得策でしょう。生体の治癒には時間が必要です」

 すなわち、「即日手術、すぐ噛める」という宣伝は、患者に誤解を与えかねない表現ということだろう。

次のページ:【3】「インプラント周囲炎」を説明しているか
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