歯は1度失えば自力では再生できないもの。だからこそ信頼できる歯科医を知っておく必要があるが、どうやって良い歯科医を見つければよいのか。『やってはいけない歯科治療』の著者で、“歯科業界に最も嫌われるジャーナリスト”の異名を持つ岩澤倫彦氏(ジャーナリスト)がレポートする。
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「目指せ!年商1億円」「自費アップの話術」「集患対策の口コミ獲得法」──これは歯科医院向けの経営セミナーで使われているフレーズである。共通しているのは、保険診療に自費診療を加えて利益を上げる手法だ。
患者のためではなく、歯科医院の経営のために自費を勧めることに、躊躇いはないのだろうか。生き残りをかけて利益確保に奔走する歯科医の姿は、医療者というより企業経営者にしか見えない。
だが、実直に保険診療を続けてきた歯科医院でさえ、自費診療を入れないと経営が持続できない状況もあるという。以前、取材した中に、保険診療に強くこだわっている歯科医がいた。その言葉が忘れられない。
「誰でも平等に受けられるのが本来の医療だと思う。高い自費診療でなければ良い治療が受けられないなんて、それはもう医療ではない」
自費診療の新しい方向性
患者の立場では、治療費は安いに越したことはない。だが、保険診療で常に最適な治療を提供される医科と違い、歯科は自費診療のほうが優れている場合がある。歯を失った時の選択肢として、主に「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」の3つがあるが、実はもう一つ、「ダイレクトブリッジ」という方法がある。
通常のブリッジは、両隣の歯を鉛筆のように削って支台にする。これに対して、ダイレクトブリッジは、両隣の歯を削らずに接着してしまうのだ。通常のブリッジより強度や耐久性は劣るが、もし外れても、再び接着することは難しくない。費用は自費診療なので歯科医院によって異なるが、5万~10万円が多いようだ。
これまで歯科の自費診療は極端に高額なものが多かった。歯科医院が発想を変えて、現実的な費用設定でダイレクトブリッジのような治療を提供すれば、患者にとってもメリットがあるだろう。