セカンドオピニオンへの協力
患者数が激減している一方、歯科大の定員は10年ほど2500人前後で推移している。過当競争は必然であり、これからも悪徳な歯科医は出てくるだろう。とはいえ、すでに多くの歯を治療している中高年世代は、死ぬまで歯科医院と付き合っていくことになる。では、どのような歯科医院を選ぶべきかご提案したい。
【1】話をしっかり聞く
主訴、治療で何を最優先に考えているか、など患者の話をよく聞く姿勢がある歯科医がいい。何が良い治療か、個人の人生観などによって全く違う。患者を理解しないと、その人にとっての最適な治療はできない。
【2】治療計画全体を示す
何を目指して治療を進めるのか、最終的に費用はどれくらい必要か。治療を開始する時に説明する歯科医が望ましい。格安インプラントの場合、契約後に治療費が加算される場合もある。
【3】治療結果を、画像を見せながら説明する
治療前後を撮影したレントゲン画像は、嘘をつけない。誠実な歯科医は、その画像を見せながら、治療の状況を説明するはずだ。根管治療で折れた器具を根管に残したままにした歯科医もいた。
【4】セルフケアをしっかり教える
歯磨き=セルフケアの方法は劇的に変化している。フロスや歯間ブラシの使い方だけでなく、適切なサイズ選択も重要だ。丁寧な指導をしてくれる歯科衛生士がいるか、必須条件で考えたい。
【5】他院でのセカンドオピニオンに協力する
歯科医の多くはすべての治療に対応しているが、本当は不得意な分野もある。特にレジン治療は個人のスキル差が大きい。担当の歯科医が得意ではないと感じたら、セカンドオピニオンや、その治療だけ他施設でやりたい、と申し出ることも必要。その時に快く協力してくれる歯科医は人間として信頼できるだろう。
患者が正しい歯科治療の知識を身につけることは、信頼できる歯科医を探す近道にもなるはずだ。
【プロフィール】
岩澤倫彦(いわさわ・みちひこ)/1966年、札幌市生まれ。ジャーナリスト。報道番組ディレクターとして救急医療、脳死臓器移植などのテーマに携わり、「血液製剤のC型肝炎ウィルス混入」スクープで、新聞協会賞、米・ピーボディ賞。著書に『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)などがある。最新著書は『がん「エセ医療」の罠』(文春新書)。
※週刊ポスト2024年8月9日号