中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

【実名投稿vs匿名投稿】立ち位置の違いから生まれるそれぞれのリスク、実名投稿は誹謗中傷の抑止力となり得るのか

ネット上の「実名・匿名」論争を考える(イメージ)

ネット上の「実名・匿名」論争を考える(イメージ)

 ネット上では頻繁に諍いが起こっている。著名人が実名でSNSに投稿した内容に、匿名のネットユーザーが反応し、それが誹謗中傷につながるケースも珍しくない。これまでネット関連の本を多数執筆してきたネットニュース編集者が、ネット上の「実名・匿名論争」について考察する。

 * * *
 昨今SNS上、特にXで頻繁に“ケンカ”が行われています。その時、一つのテーマとなるのが「実名か、匿名か」でしょう。実名ユーザーが誹謗中傷されたと感じたら「匿名の安全なところから卑怯だ。名前・所属先を明かさないというのは非対称である」と主張する。匿名ユーザーは「実名の人は得られるものがあるからそうしてるだけ」と反論をする。

 2020年、プロレスラー・木村花さんが匿名のXユーザー多数による誹謗中傷を受けて亡くなった際も、この論争が取り沙汰されました。そして現在は、パリ五輪に関してアスリートへの匿名による誹謗中傷が多数見られています。今、このテーマは再度確認しておくべきなので、ここで考察してみます。

 ユーザーが少なく、ネットが穏やかな世界だった1990年代からネットでは匿名文化がありました。匿名のユーザーによって作られたものでも良いコンテンツは良い、といった空気感があったのです。2000年代中盤、ブログが隆盛を極めると匿名(というかハンドルネーム)の人々が出版社から注目され、多数のブログ発の書籍が発刊されました。

 そんなところから有名になったのが能町みね子氏やちきりん氏、『中国嫁日記』の井上純一氏らです。これは「匿名だろうが良いものは良い」というネットが元々持っていた理念を体現したものといえましょう。

 しかし、ユーザー数が増えるにつれ、ネット社会は野獣が大暴れする荒野のごとき状況になり、日々ケンカが発生するとともに、「粘着」と呼ばれる熱心なアンチに苦しめられる人も出てきた。あと、ブログについてはアメブロのようにコメント欄を閉じたり検閲制にするなどして実名の著名人等を運営側が守る措置を取る例もあります。

 かつて炎上の花形だったブログですが、一旦落ち着きを見せ、主戦場はTwitter(現X)に移ります。ここはブロック機能はあるものの、あまりにもお手軽に投稿できるため、反射的に罵詈雑言を書いてしまったりするユーザーもいる。書かれた側もカッとして応戦。以後、不毛な言い合いが続くのが風物詩になってきたし、今でもそれは続いています。

次のページ:実名ユーザーと匿名ユーザーそれぞれの主張
関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。