中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

【実名投稿vs匿名投稿】立ち位置の違いから生まれるそれぞれのリスク、実名投稿は誹謗中傷の抑止力となり得るのか

 私自身は元々匿名でブログをやっていました。当時はあるニュースサイトの編集をしていたのですが、そのサイト名(所属)を明らかにしたうえで、「謎のマスクマン」という体でそのニュースサイトの宣伝をしていました。時にはライバルだった別のニュースサイトへの批判もしていたのです。

 この時は、表に出たくなかったので名前は出していません。「○○ニュース編集者」を名乗っていただけです。しかし、2009年4月、『ウェブはバカと暇人のもの』という著書を出してから、イベントや講演も含め、仕事のオファーが殺到。この時はネットで実名を出すことの利点を感じ、2010年2月から実名を出すようにしたのです。

 私はあくまでも「宣伝材料」があるから実名顔出しをしているだけです。そして今、この実名がネット上のハンドルネームのようになってしまったため、今後匿名に戻ることはないでしょう。だからといって匿名の人を卑怯者呼ばわりする気はありません。なぜなら私も含め、実名で投稿している人はミドルリスクミドルリターン(時々ハイリターン)であり、匿名の人はハイリスクローリターンだからです。

 それに、インターネットの元々の理念は「フラット」。良い意見を言っていれば匿名だろうが実名だろうが関係ない。古臭い考えに思えるかもしれませんが、インターネットが普及し始めた初期の頃に、もうこの価値観は誕生していたわけで、これは色褪せないと思います。人は自由にインターネットを使えばいいのです。ただし、攻撃をし過ぎたら罰が下りますが。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。

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