最近は、利用者全体で負担を分かち合うユニバーサルサービスの仕組みに対する不満の声も聞かれる。全国均一料金を維持することを優先して、コストが多くかかる遠隔地や過疎地への配達料金を抑え込んでいることへの不公平感だ。
SNSには「コストのかかる離島や山間地への郵便は、利用者に応分の料金負担を求めるべき」「人口が密集する大都市だけに限定したサービスを創設すれば、もっと値下げできるはずだ」といった意見も見られる。人口減少で人口の偏在が進めば、郵便事業に限らずこうした要望はさらに強くなるだろう。郵政民営化を決めた際にどこまで人口減少の影響を想定していたのか。民営化したことの是非が、いまさらではあるが改めて問われている。
総務省や日本郵便が本質的な問題の先送りを続けようにも、いずれはユニバーサルサービスのコストをどう賄い、配達要員をどう確保し続けるのかという現実にぶち当たる。人口減少が、郵便局・郵便ポストの統廃合や地域別料金といったこれまで触れられてこなかった選択肢の検討を迫りつつある。
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。