日本株が激しい乱高下に見舞われている。7月11日に4万2224円(終値)の史上最高値をつけた日経平均株価は8月5日の歴史的な大暴落によって約3週間で1万円以上(約25%)も下落。翌6日に過去最大の上げ幅で急反発するなど、ジェットコースターのような激しい値動きが続いている。
この「大暴落」の要因は、米国の雇用統計が悪化したのをはじめ米国の景気後退懸念が高まったことに加え、日銀が7月の金融政策決定会合で「利上げ」に踏み切ったことが大きい。あまりの市場の混乱を受けて、日銀の内田真一・副総裁は7日の講演で「市場が不安定な状況で利上げをすることはない」と再利上げを急がない考えを示唆して事態の鎮静化を図っているような状況だ。株価乱高下の引き金について、経済ジャーナリストの須田慎一郎氏が解説する。
「雇用統計の悪化などによる米国の景気後退懸念というのは“後付け”の理由にすぎず、日本株がここまで下がった引き金となったのは日銀の利上げに間違いない。米国のFRB(連邦準備制度理事会)が9月にも利下げするという観測が高まり、それによって日米金利差の縮小が見込まれることから円高に反転。輸出関連企業の業績悪化懸念から、まるでドミノ倒しのように日本株が過剰なまでに売り込まれた。
しかし、これはあまり指摘されていないが、株価が極めて不安定な状況をつくりだした背景には、もうひとつ大きなポイントがあります」(以下「」内は須田氏)
“脆弱な要因”に支えられていた日経平均の史上最高値
須田氏によれば、そもそも市場には「いよいよ日本が本格的にデフレ脱却するのではないか」という期待感の高まりがあったという。それに呼応するかのように、日経平均も右肩上がりになり、7月11日には史上最高値を記録している。
「デフレ脱却は、単に消費者物価指数が上がっているからという理由ではなく、需要と供給のギャップを見る必要があります。長引くデフレで供給よりも需要が少ないのに、政府や日銀は需給はほぼフラットになりつつあるという見方をしています。とはいえ、それはコロナ禍や人手不足の影響で供給側がフル操業していないため、企業側の供給能力を低く見積もっているからにすぎません。本来あるはずの潜在的な供給能力で考えれば、まだまだ供給が需要を上回っている。いわば“手心”を加えた供給能力でいくら検証しても意味がない。
にもかかわらず、“本格的なデフレ脱却が見えてきた”と市場では受け止められ、企業業績が向上して賃上げが進み、GDPの約6割を占める個人消費が回復してプラス成長に転じるという好循環への期待が高まり、株価は上昇していった」