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中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

フワちゃん暴言騒動で「別アカウントはない」と表明した意図 ネットニュース編集者が指摘する「サブ垢」と「誤爆」の大きすぎるリスク

サブ垢は「自分の身を隠して悪口を言いたい」だけのもの

 実際問題として、サブ垢というものは利がありません。基本的には悪口を言うためのもので、ストレス解消になると考えている人もいるのかもしれませんが、もしもバレた場合のダメージが大きすぎる。それは、サブ垢がバレた時にその人物が持っていたドス黒い感情が人々の心に沁み込むからです。これは本当に一生モンのヤバい行為です。

 本垢からのログアウトを忘れることは時々あるわけですよ。そうなると本垢からの投稿になってしまうわけですから、これはただのリスク。スマホを複数持ってIDごとに使い分けるのであれば、そのリスクは低減するかもしれませんが、そこまでしてサブ垢を運用する価値はない。何しろ「悪口を言うため」なのですから。

「趣味用とプライベート用と使い分けているんです~」と言う人もいるかもしれませんが、そんなもんは一括して「リスト」を作れば済む話。とにかくサブ垢は「自分の身を隠して悪口を言いたい」だけのものです。だからそれがバレた場合のリスクを恐れ、やめたほうがいい、と提案しているのです。

「誤爆」が好印象を残すのはレアケース

 個人でサブ垢を運用しているわけでなくとも、企業の広報担当など「中の人」が企業IDと個人IDを使い分けているケースはあるでしょう。そうした際も「誤爆」はつきものです。数年前には、ある放送局の企業IDを運用する「中の人」が、個人IDのつもりで企業IDから特定政党の批判を書き込み、懲戒解雇されるという案件もありました。IDの使い分けはとにかくリスクが高いのです。

 一方、レアケースかもしれませんが、「誤爆」が好印象を残した例がないわけではありません。かつて、とあるマジメな企業の「中の人」が個人IDのつもりでその企業のIDで、あるミュージシャンのライブが最高である!といった投稿をしたのです。

 その会社のID自体が元々好感度が高かったのですが、「中の人」が見せたプライベートな部分が、ネットユーザーに支持され、高感度アップに繋がったのですね。ただ、「もしこれが誹謗中傷の書き込みだったら、どんなことになっていたのか……」と考えるとゾッとします。

 仕事でやむを得ないケースもあるかもしれませんが、IDの使い分けはリスクが高い。特に個人でサブ垢をもっている人は、その存在がバレた場合ロクな結果をもたらさない。

 フワちゃんはサブ垢ではなかったとの公式発表ですが、本垢であのような過激な発言をしたわけですから、まぁ、同情の余地はありません。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。

【画像】問題となったXでの投稿
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