「学力テストのみ」推薦入試の大きなインパクト
さて、その「推薦入試が過半数」のトレンドの中で、衝撃的なニュースがあった。従来の推薦入試は、学力テストではなく、評定平均値や活動実績、小論文、面接、グループディスカッションなどで合否を決めていくものだった。
ところがだ。東洋大学が“学力テストのみで合否を決める”推薦入試をはじめると発表した。入試日は12月1日である。併願可能な公募制の学校推薦型選抜だ。
推薦入試はふたつに分かれる。自由に応募できる総合型選抜と、学校長の推薦を必要とする学校推薦型選抜だ。後者は、まず、指定校推薦と公募型推薦がある。指定校推薦は大学が高校に「指定枠」を与え、校内で選抜された生徒が学校長から推薦されて出願できるもの。もう一つの公募型推薦は学校長の推薦があれば、誰でも自由に出願できるが、指定校のように「推薦されたらまず合格」ではなく、大学側が選抜をする。
この公募型の学校推薦型選抜も大抵は「評定平均値4.1以上」「英検2級以上」といった出願条件があるが、今回の東洋大学の新推薦入試にはそういった出願条件はない。
試験は「基礎学力テストのみ」。試験科目は「英語・国語」または「英語・数学」の2教科2科目となる。面接も小論文もないので、それらの対策も不要だ。
ようは一般的な推薦入試といわれるものではなく、2月に行われる一般選抜入試と同質のものなのだ。評定平均値を点数化もせず、純粋にペーパー試験の点数で合否を決めていく。なので、一般選抜に向けて、勉強をしている受験生が負担感なく受験ができる。併願も可能なので、年内にこの入試で合格を決めて、2月の一般入試に向けて集中して勉強もできる。東洋大学入試部長・加藤建二氏は「高校側は、総じて、この推薦入試を好意的に受け止めてくださっている」と語る。
実際、その通りで、一都三県の高校の多くがこの入試に興味を示し、「うちからは80人受験する予定です」「倍率も高くなりそうですが、2月の一般選抜の練習にもなりますからね。受験したいという生徒は多いです」という声が聞こえてきた。
この新推薦入試は、受験系のYouTuberが取り上げ、ウェブでも話題になっている。
「受験生を根こそぎもっていくのか」と煽るYouTuberもいるが、実際には募集人数は578名で、募集定員7375名(2025年度)のうちの8%ほどに過ぎないからそんなことはない。一方で、推薦入試としてはかなりの規模の人数であり、予備校や高校で「合格者は何千人になるらしい」といった噂が駆けめぐっている。
関西圏の多くの大学は30年以上前に導入
さて、実はこの「学力テストのみの推薦入試」は関西ではすでに多くの大学が導入し始めているものだ。関西の大学事情に詳しい株式会社阪神進学アカデミー・松田元気代表はいう。
「現在、関西では難関私大の関関同立(関西大学、関西学院、同志社、立命館)以外はほぼすべての大学で、学力テストによる公募制推薦を実施しています。とくに産近甲龍(京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)や摂神追桃(摂南大学、神戸学院大学、追手門学院大学、桃山学院大学)などの中堅の人気大学は評定平均値を考慮しない学力のみで併願を増やしています」