現在、大学入試では推薦入試が主流となっており、その入試方法も多様化している。そうした中で、近年、受験生の人気が高まっている東洋大学が新たに導入する「学力テスト型の推薦入試」が大きな注目を集めている。導入の背景や他の大学への影響について『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする。【全3回の第3回。第1回から読む】
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今や、大学入学者の過半数が推薦入試での入学を決めている。ひとつの要因としては、少子化の中、大学側が早期に学生を確保したいという思惑もあろう。その一方で推薦入試は学力を重点的に見ないために、「学力が足りない受験生でも合格してしまう」と批判されることも多い。文部科学省も推薦入試でも共通テストを利用するなどし、学力をきちんと測るように通達している。推薦でも学力を測るように大学は努力しているが、それもなかなかむずかしい。
関東の多くの大学では、推薦入試の際に評定偏差値で学力を測ってきたが、それも高校によって基準が違うものでもあるし、なかなか正確には測りきれないという悩みがある。そんな試行錯誤する大学の推薦入試だが、関東で人気を集める東洋大学が「学力テストのみで合否を決める推薦入試」を導入するということで大きく話題を集めている。
前回記事では、東洋大学入試部長の加藤建二氏にインタビューし、入試を導入する狙いや実際にどうしていくのかについて伺った。年内入試(推薦入試)のニーズが高まる中で、総合型選抜の難しさや受験生の学力を伸ばすための入試のあり方について、語ってもらった。引きつづき、話を聞いていこう。
――基礎学力がない学生が増えているのは全国的に問題になっています。それでは大学に入ってからの学びがうまくいきませんよね。
「文科省は『高校時代に頑張ったことを多面的総合的に評価する入試を』という方針ですが、東洋大学としては『頑張った結果、身についている力』を評価する入試がしたいんです。そのためには、現状では、やはり学力重視型の入試が最適だと考えています」(東洋大学入試部長・加藤建二氏、以下同)
――新推薦入試は募集人員が578名とのことですが、「受験生を根こそぎもっていってしまう。受験業界を揺るがしかねない」ともいわれていますが。
「大学受験の世界を大きく変えるんじゃないかといった話も出ていますが、実際には東洋大学入学定員の1割未満ですからそうは大きな影響は与えないでしょう。ただ、他の大学から問い合わせや相談がありますので、そのあたりの動向は注目されていくのではないでしょうか」