関西の大学にも話を聞いてみよう。
近畿大学は関西で圧倒的な人気を集める大学で、同大水産研究所が完全養殖に成功した“近大マグロ”の店を東京銀座や東京駅構内に出し話題になっていることもあり、関東でも知名度が高い。その近畿大学は公募制の学校推薦型として学力重視の推薦入試を行っている。
「近畿大学では1968年度から学力テストを課す公募制の学校推薦入試を行っております。1992年度には面接を廃止し、翌1993年度には評定平均値の点数化を廃止しています」(近畿大学入学センター事務部長・河原陽子氏)
この「学力のみで合否を決める推薦入試」が関東にも上陸するのだから、受験業界では大きな話題になって当然だろう。
勢いのある東洋大学が導入する影響
この「学力テストのみの推薦入試」が話題になっているもう一つの理由は、東洋大学が導入するという点だ。
関東の中堅大学を指す「日東駒専」の中で、東洋大学は頭ひとつ抜けた存在だ。就職も好調で、志願者数も増やしており、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)と並ぶ勢いだ。実際、河合塾偏差値で東洋大学の経済学部経済学科の偏差値は55.0(前期3教科・英国社)、法政大学の経済学部55.0(A方式・3教科)と同じぐらいの難易度になってきており、「TMARCH」という言葉すら最近は見かける。その上り調子にある東洋大学が、学力テストのみの推薦入試を始めるということで注目が集まっている。東洋大学が始めれば、他の中堅大学も追随しやすいから、受験業界への影響は大きい。
では、なぜ、東洋大学はこの「学力テストのみで合否を決める」推薦入試を始めるのか。次回は、改めて東洋大学入試部長の加藤建二氏へのインタビューを掲載する。
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)で連載をし、『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』で記事を書いている。【Xアカウント】@sugiyu170