現在、大学入試では推薦入試での入学者が増えており、その入試方法も多様化している。この中で、東洋大学が導入を決めた推薦入試が大きな話題を呼んでいる。近年、受験生の人気が高まっている東洋大学だが、新たな推薦入試の特徴はどのようなものか。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする。【全3回の第1回】
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2023年の大学入試での入学者のうち、一般選抜は47.9%となっている。残りの52.1%、つまり、過半数が推薦入試で大学に進学をしているのだ。今後、推薦入試を重視する流れはさらに加速するだろうとも推測されている。
理由はなぜか。まず、文部科学省の方針だ。
一般選抜はペーパー入試で学力だけを測る。一方で、推薦入試は活動実績や小論文、面接試験などで総合的な能力を見る。文部科学省の令和4年度大学入学者選抜実施要項では、大学入学者選抜は「入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に判定する」とし、すなわち、国は推薦入試を推しているのだ。
もう一つは、受験生からの“年内に受験を終えたいから推薦入試で早めに合格を決めたい”というニーズだ。
ネットでは学歴厨とも呼ばれる「偏差値至上主義者」の声も大きいが、現実にはそういった風潮はマイノリティになってきている。大手予備校を取材しても「偏差値至上主義はもはや終焉。自分に合った大学、自分が望むことが学べる大学に進学するという発想になってきている」と話す。そのため、ガツガツ勉強をして一般選抜でいくつもの大学を受験し、少しでも偏差値の高い大学に入学しようとするよりは、推薦で早めに「自分の希望に合った」進学先を決めようという風潮が強くなっている。
そのため、現在、推薦対策をする塾が増え、ナガセ傘下の早稲田塾、ベネッセの東京個別指導学院、Z会の栄光ゼミナール・大学受験ナビオ、そして、最近では大手予備校の河合塾も本格的に推薦入試対策に参入している。
一方で、推薦入試への批判や反発もSNSなどでよく見受けられる。俳優の鈴木福さんが総合型選抜で慶應の環境情報学部に合格した時は「ずるい」という声がたくさん見受けられた。彼が受験した入試は書類審査と面接のみである。受験事情を取材している記者の視点だと「彼ほどのキャリアがあり多忙な芸能人がここまで努力し、緻密に準備をしたのは立派だ」と思えるのだが、世間には「学力テストなしで入学できる」ということへの反発があるようだ。