長周期地震動と共振して大きく揺れるタワマン
南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループの2012年の試算によると、想定死者数は最大32万3000人。2019年の再試算で23万1000人に減少したが、それでも東日本大震災の死者・行方不明者約1万8000人の約13倍という数字だ。
いまから約80年前に、同じ南海トラフを震源域として発生した昭和東南海地震(1944年)と昭和南海地震(1946年)を合わせた死者は、約2500人だったという。時代が変わり、人口が大幅に増えたことで、被害は爆発的に膨らむ。
前述したように海溝型地震は、大きな横揺れが特徴だ。その被害をもろに受けかねないのが、都市部や臨海部に林立するタワーマンション。東京の臨海エリアや横浜、大阪、名古屋のタワマンは“社会的ステータス”の象徴の1つでもある。
ところが、高層の建物は、ゆっくりとした「長周期地震動」と共振することでさらに揺れる。内閣府の検討会による推計では、東京23区で最大約3m、大阪市沿岸部のビルの最上階では揺れ幅が約6mに及ぶと想定している。地震の揺れが収まっているにもかかわらず、長いと10分以上、しかも地震の揺れ以上に揺れる状況が続く恐怖は想像したくもない。停電してエレベーターは動かず、高層ゆえ階段で下りるのにも時間がかかる。その間に火災が起きれば、半壊リスクも高まり、命の危機に直結する。
今年2月、中国・南京にある34階建てマンションで発生した火災では、15人が死亡し、44人が重軽傷を負った。多くのタワマンが立つ臨海部の埋め立て地では、液状化現象で長期にわたって住むことも通ることもままならない状況に陥ることも考えられる。くれぐれも注意しておきたい。
※女性セブン2024年9月5日号