甲子園常連の強豪校へ進学するためには「越境入学」は当たり前のこととなっているが、当然費用の面では負荷が大きい。甲子園に出場した息子を持つ群馬県のBさん(49才)はこう語る。
「野球だけなら部費や遠征費を含めて年100万円程度ですが、うちは地元を離れて親戚の家に居候したのでその分の生活費が月10万円ほどかかりました。トータルで年220万円以上の支出になり、私と夫に加えて双方の実家の援助がなければ経済的に無理だったと思います」
入寮日に泣いた母の思い
15才の息子が自分の元を離れることは、母にとってつらい経験でもある。
『アルプス席の母』の著者・早見さんは高校時代を桐蔭学園の寮で過ごした。入寮の2週間前から母は見るからに落ち込み、どんよりと重たい空気が家を包んだという。
「うちのおふくろは野球なんて好きじゃないし、桐蔭の野球部に入ってほしいとも思ってなかったから、出発の日は泣いていました。当時、ぼくは自分のことでいっぱいいっぱいで親と離れるに早いとは思わなかったけど、いまちょうど一人娘が中3なんです。感覚としてはついこの間生まれてきた感じの娘と、あと半年で離ればなれになると考えたら、さすがに早すぎると思ってしまう。いまとなってはあのときのおふくろの気持ちがよくわかります。
取材の際も、入寮時にぼくのおふくろが泣いた話をしたら、『すごくわかる!』という母親が大半で、『人生でいちばん寂しかったのは、あの瞬間でした』と話すかたもいました。おふくろは料理が得意じゃなかったけど、入寮の前の日は好物を作ってくれたようなぼんやりとした記憶があります。母親たちは巣立つ息子を応援する気持ちと、行ってほしくない気持ちが葛藤しているんでしょうね」(早見さん)
※女性セブン2024年9月5日号