円安、インフレ傾向が強まるなか、日本企業の「役員報酬」にはどのような変化が表われているのか。上場企業で1億円以上の役員報酬を得る役員については、有価証券報告書への記載が義務付けられている。そこで東京商工リサーチの調査を元に、2023年4月期から2024年3月期までの決算で役員報酬を得た人物を集計した。どの企業の役員が高額な報酬を得ているのか──。その特徴を見ていく。
企業別で開示人数が最多だったのは34人の「日立製作所」。昨年の22人から「億超え」が大幅に増加した。35人中8人が外国人役員だ。専務であるロレーナ・デッラジョヴァンナ氏(55)の報酬総額は4億2600万円。
ロレーナ氏は2021年、同社初の女性常務に登用された人物だ。当時のインタビューでは「110年の長い歴史の中で、初めて執行役常務に女性を選出した素晴らしい名誉とともに、大きな責任を感じている。これが日立の変化や変革を通じて誰にでも居場所を与えたいという願いです」と語っている。『経済界』編集局長の関慎夫氏が言う。
「近年は国内だけでなく、優秀な人材は海外の企業との奪い合いになります。外資系企業は役員報酬が高額です。従来の『年功序列』の賃金形態では戦えない。そのため引き抜きなどで入社した外国人役員を中心に役員の報酬が“海外水準”に合わせて高騰しています。現に日立の役員で最高額は小島啓二社長(67、6億700万円)ではなく、クラウディオ・ファキン執行役専務(59)の9億600万円です」