明治時代に始まった日本特有の制度
日本での株主優待制度は、明治時代に始まった。鉄道会社が株主に「無料乗車券」を贈呈したのが始まりとされる。諸外国にはほとんど見られない日本特有の制度で、戦後から高度成長期にかけて多くの企業が取り入れるようになった。現在では、全上場企業の約4割が株主優待を行なっている。マーケットバンク代表の岡山憲史氏が解説する。
「企業が株主優待を行なう狙いは、自社の商品やサービスをより身近に感じてもらい、投資家の満足感や株投資への意欲を高めることです。一方で株主にとっても、総合的なリターンのメリットを感じやすい。限定商品や特別なサービスを提供されることもあり、とくに個人投資家にとっては満足感を得やすい“特典”と言えるでしょう」
企業、投資家双方にとってメリットは少なくないはずだが、なぜここにきて「株主優待」の廃止・縮小が相次いでいるのか。岡山氏が続ける。
「理由のひとつは『全株主に対する公平な利益還元』を求める声が多くなったことです。とくに、日本市場の売買の6割を占める外国人投資家(機関投資家)からの要求が大きい。一部の日本人投資家だけが恩恵を受けやすい株主優待を廃し『その分を配当などの還元に回せ』という主張です」
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