孫悟空が三蔵法師との旅を終えた後の世界
中国のゲーム市場は世界最大規模であり、2024年上期は1472億6700万元(2兆9895億円)に達している(2024年1-6月中国ゲーム産業報告より)。ゲーム人口は6億7400万人であり、世界全体の約半分を占めている。ただ、ゲームの主力は、開発期間が短く、制作コストも安いスマホゲームが主体となっており、金額ベースで全体の73%を占めている。
テンセントをはじめ、三七互娯、世紀華通など大手ゲームメーカーは依然として高収益体質ではあるが、習近平政権がゲームに夢中になることによる教育への悪影響を問題視して規制が強化されており、開発の自由度は狭められている。PC、ゲーム機専用ゲームについては、依然として盗作問題への対応が難しく、日米欧などと比べると市場規模は小さい。こうした厳しい事業環境の中で、無謀とも思えるAAAゲームの開発を手掛けながら、初日で投下資本をすべて回収してしまうほどの大成功を収めた点は注目に値しよう。
肝心のゲーム内容であるが、孫悟空が三蔵法師との旅を終えた後の世界を描いている。再び石の中に閉じ込められた悟空を救い出すために、悟空とそっくりの天命人(猿)が救出に必要な6つの霊宝を集めるために旅をする物語だ。
一見、単純明快なストーリーのようにもみえる物語に込められた含意は深い。道教と仏教の争いがベースにあり、妖怪たちは道教側、道教の神々に繋がる者たちで、天命人は仏教側で、すたれてしまった仏教を立て直しつつ、妖怪退治といった苦行を経験することで徳を積み、最後は悟空を救い出すといった裏の意味があるようだ。道教や仏教に造詣が深ければ、細部の作り込みの一つ一つまでしっかりと楽しむことができる格調高いゲームといえそうだ。なお、言語は中国語、英語の2種類だが、日本語については字幕を出すことができる。
日本のYouTubeをみると、日本人ゲーマーたちが一部映像とともに感想を伝えている。戦闘アクションが多彩で面白いこと、グロテスクな表現もあるが細部まで映像の質が高いことなど、肯定的な意見を伝えている。いわゆる“死にゲー(ゲームオーバーになりやすいゲーム)”と言われる範疇のゲームだが、何度か挑戦していれば、なんとか攻略法が発見できるそうだ。