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【絶好調・日立製作所の研究】ライバル・東芝の8倍の企業価値に押し上げた「野武士集団」の大変革 ピーク時に20以上あった上場小会社は“選択と集中”でゼロに

報酬1億円以上が34人も

 脱電力・電電ファミリーを目指す日立は、海外に活路を見出した。2020年にはスイスの重電大手ABBから「送配電事業」を約7400億円で買収。長距離を効率よく送電する技術が「再生可能エネルギー」の導入が進む欧州などに受け入れられ、2023年9月末時点の送配電事業の受注残が3兆9000億円と好調だ。

 主力の鉄道事業では今年6月に仏タレスの鉄道信号事業を買収した。送配電事業や鉄道事業は一見地味だが、どちらもデジタル技術を使った制御システムなどの導入で変革期を迎えており、これまでの経験とIT、ソフトウェア技術の両方を持つ日立が、海外で優位なポジションに立てている。

 両事業の2023年9月末の受注残は8兆5000億円、2024年3月期の売上高海外比率は61%に及ぶ。「電力10社とNTTの下請けメーカー」という位置付けは完全に過去のものになった。

 加えて2016年に打ち出したのが、デジタル事業「ルマーダ」。膨大なデータを処理して多くの企業の問題解決に活かすビジネスで、新たな軸になった。

 グローバル企業を目指す日立は、ガバナンス改革も積極的に進めている。同社の取締役会は12人の取締役で構成されているが、9人が社外取締役。さらにこの9人のうち5人が外国人だ。日立社内の人間は社長の小島啓二氏、元CFO(最高財務責任者)で現在は取締役の西山光秋氏、会長の東原敏昭氏の3人だけである。

 5人の外国人のなかには2019年まで日立が改革のお手本とする独シーメンスのCIO(最高情報責任者)だったヘルムート・ルートヴィッヒ氏、フィンランドのノキア出身でネット企業のeBay、PayPalを経て現在はウォルト・ディズニーの上級副社長を兼ねるルイーズ・ペントランド氏ら多彩な人材が含まれる。

 世界水準の報酬を支払わなければ、こうしたグローバル基準の経営者は集まらない。外国人取締役の高額報酬に水準を合わせた結果、2023年度の日立の役員(執行役含む)には、1億円プレーヤーが全業種で最多とされる34人も誕生した。

 東芝を圧倒する日立だが、彼らが「ライバル」と見る独シーメンスには及ばない。シーメンスの株式時価総額は8月23日時点で1327億ユーロ(約21兆5000億円)。まだ5兆円の開きがある。

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