シーメンスは5月16日、大型モーター事業を米投資会社KPSキャピタルパートナーズに売却すると発表した。売却額は35億ユーロ(約6000億円)。人工知能(AI)を使った工場の自動化などデジタル・ソフトウェア部門に注力するためだ。
大型モーター事業のなかには船舶や鉱山機械向け大型モーター・駆動装置が入っており、同社の祖業の一つと言える。だが、ローランド・ブッシュ社長は「テクノロジー企業としての位置づけを明確にするため、ポートフォリオの最適化を進める」と意に介さない。ドイツを代表する重電メーカーだったシーメンスは、ソフトウェアを中核とする産業デジタル・プラットフォーマーに変貌した。
少子高齢化、人口減少、それに起因する人手不足と後継者難。工業だけでなく、サービス業、農水産業を含め全産業でネットやAIをフル活用しなければ日本は次のステージに進めない。日立はその先頭に立つ企業である。
【プロフィール】
大西康之(おおにし・やすゆき)/1965年生まれ、愛知県出身。ジャーナリスト。1988年早大法卒、日本経済新聞社入社。日経新聞編集委員などを経て2016年に独立。著書に『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』(東洋経済新報社)、『最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』(小学館)など。
※週刊ポスト2024年9月13日号