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【2040年問題】就職氷河期世代にいまさら就労支援しても失った時間は取り戻せない 貧困に苦しむ“将来の高齢者”を救う財源はあるのか

今後、貧困に苦しむ高齢者が増えていく可能性も(イメージ)

今後、貧困に苦しむ高齢者が増えていく可能性も(イメージ)

 高齢化の進展にともない、内閣府は1人あたりの平均医療費が2019年比で2030年には10%増、平均介護費は34%増と予想している。2040年にはさらに膨らみ、それぞれ16%増、63%増になるという。こうした高齢者増による医療介護費の増大が「2040年問題」として懸念されている。この問題は、政府が進める「全世代型社会保障」制度にも暗雲を投げかけている。どういうことか?

 人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。

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 政府の「全世代型社会保障」が一筋縄で行かない理由の一つに、今後、貧困に苦しむ高齢者が増えていくことが挙げられる。これから高齢者になる就職氷河期世代は、現在の高齢者より老後生活が厳しくなると見られているのだ。

「厚生労働白書」によれば、2019年時点における35~44歳人口約1637万人のうち36.3%が無年金・低年金の予備軍だという。これらより少し上の世代も、長引く日本経済の低迷の影響でリストラされたり、勤務先が倒産したりして非正規雇用者となった人は少なくない。

 政府が就職氷河期世代にいまさら就労支援をしても、若年期に失った「時間」を取り戻せるわけではなく、間に合わない。このままでは生活保護受給者が激増しそうだ。就労支援から老後生活を直接サポートする福祉政策の強化に切り替える必要がある。

 高齢者に負担増を求めるどころか、貧困に苦しむ“将来の高齢者”をどう支援し、その財源をどこから確保するかということが「2040年問題」の主テーマなのである。

 そうでなくとも、少子高齢化や人口減少の加速に伴って新たな財源を必要とする社会保障上の課題が登場してきている。速すぎる出生数の減少スピードを踏まえれば、子育て支援策はさらに手厚くせざるを得ないだろう。慢性的な人手不足や低所得者支援などにも多くの予算が必要となる見通しだ。

 現役世代への過度な「しわ寄せ」は是正すべきではあるが、どの年齢層もゆとりのある人は多くはない。その中で世代間の負担の押し付け合いをしても根本解決にはつながらない。全世代型社会保障というのは最初から「計算の合わない話」なのである。

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