モノづくりから人づくりへ
当時子会社の社長だった川村隆氏が呼び戻されるかたちで日立製作所の社長に就任したのは2009年4月のことだった。そこから、「選択と集中」を徹底することでV字回復につながった。
「大きな赤字を出していた当時、上層部からよく言われたのは“モノづくりから人づくり”へのシフトという話でした。モノをつくるだけでなく、それに付随する様々なサービスをつくり、売り上げを拡大する。電車の車両やエレベーターをつくるだけではなく、メンテナンスや運用のシステムを含めたビジネスを広げていく。そうした方針が行き届いたことで、日立製作所は今のような経営状態を実現できた」(福富氏)
70歳で日立を卒業した後、中小企業を対象にしたコンサルタントをするうえでも、当時の経験が活きているのだという。
「モノづくりの現場に出向き、生産性の向上、業務の改善などについて助言しています。日立にいた頃、危機からのV字回復を間近で体験したからこそ、組織の欠点や長所を感じ取ることができる。モノづくりの現場も大切ですが、トップがぶれないことも同じくらいに大切。そうした日立で学んできたことを忘れずに仕事を続けていきたいと思っています」(福富氏)
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